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豪州、旅行の回復順調、現地商談会には600名超集まる-日本路線増強にも意欲

  • 2023年5月1日

(ゴールドコースト発 特派 松本裕一) オーストラリア政府観光局(TA)は5月1日、43回目となる現地商談会「ATE23」をクイーンズランド州のゴールドコーストで開幕した。ATEは例年開催しているイベントだがコロナ禍では中止、オンライン、ハイブリッドと形を変えての実施となり、リアルのみでの開催は4年ぶり。国内のセラー576社・団体の約2300名と32ヶ国の564社・団体から集まったバイヤー623名が4日間に渡って延べ4万5000件の商談を交わす。日本からも17名のバイヤーが参加している。

会場の様子

 記者会見でTA総局長のフィリパ・ハリソン氏は2月の実績をもとに回復の状況について説明。外国人訪問者数が2019年比で65%まで回復しただけでなく、さらにコロナ後で初めてレジャー目的での入国がVFRを上回った。市場によって回復の度合いに差はあるもののニュージーランドや英国、米国などでは9割近くとなり、日本も5割程度まで戻している。

 また国際線の航空座席についても、2022年1月は2019年比20%に留まったが2023年5月には86%となる想定。こちらもインドが255%、韓国が161%、カタールが112%となるなど勢いに差は出ているものの、日本も92%まで回復しさらに9月の段階では97%に達するとの予想。高止まりが指摘されている航空運賃についても、座席の増加とともに落ち着いてくると期待している。

 また、世界中の旅行観光産業で問題となっている人手不足とそれによるサービス品質の低下などの影響についても、ネットプロモータースコア(NPS)が2019年7月には45だったところから2022年12月には61に伸長し、英米日韓など13ヶ国・地域のなかでの順位も7位から4位へと上昇していることから、中小企業を含めて対応ができていると自信を示した。

 訪問者数は2025年にはコロナ前の水準を超えさらに増加していくと想定。外国人訪問者による消費額は2024年に完全回復するとしている。消費額については、さらに連邦政府としても観光の長期戦略のなかで国内旅行も含めて2018年度に1220億豪ドルであったところから2030年度には2300億豪ドルへと引き上げる野心的目標を掲げている。

「ルビー」のグローバルキャンペーン好調、新年度の重点項目は?

TA総局長のフィリパ・ハリソン氏

 会見では、こうした目標の達成に向けて7月からの新年度で力を入れる項目についても説明。まずは今年度に開始したグローバルキャンペーン「『グッデイ!』ではじめよう、オーストラリア」に引き続き注力するとした。ブランドアンバサダーとなったカンガルーのぬいぐるみのキャラクター「ルビー」についてハリソン氏は、日本を含めて各国でショートムービーの吹替版が作られていることからマルチリンガルの有能なアンバサダーとして活躍していると紹介したうえで、「今後も世界中で大きな役割を果たしてもらう」と語った。

 これ以外では、航空会社などとの協業による需要喚起や開催まで3ヶ月を切ったFIFA女子ワールドカップの有効活用、ワーキングホリデーの促進、旅行観光産業のリカバリー支援に注力するほか、ビジネスイベントの獲得も強化。ルビーはこれらの分野でも適宜起用していく。

 さらに、先住民文化をテーマとした観光やサステナビリティ、アクセシビリティへの対応も強化していく方針で、例えばアクセシビリティについてはオーストラリア旅行を考えている消費者の24%がアクセシビリティに関して何らかの問題を抱えていたり、86%の消費者がアクセシビリティが旅行先選定に影響をおよぼすと答えたりしていることから、非常に大きなポテンシャルを秘めていると指摘した。

クイーンズランド州は五輪に向け意欲

クイーンズランド州観光大臣のスターリング・ヒンチリフ氏

 会見ではクイーンズランド州の観光大臣や州政府観光局とゴールドコースト観光局のトップも登壇。コロナ禍でも積極的な再開発が進められたことでインフラがさらに充実したことなどが披露されたほか、2032年にブリスベンでの開催が決定したオリンピック・パラリンピックに向けての意欲も示された。例えばインフラ関連ではゴールドコーストだけで3000室の客室が増加。オリンピックについては80億豪ドル超の経済効果が見込まれている。

 また、観光面では国内旅行が順調で2022年は過去最高の1年となったところ。海外からの誘客については路線の確保が重要となるが、2億豪ドルの路線誘致用予算の効果もありヴァージン・オーストラリアの羽田/ケアンズ線を含めて各国へ複数の新路線が決定。今後も引き続き日本路線を含めて座席の復旧と増加に取り組んでいく方針だ。