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海外医療通信2023年4月号 【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2023年4月26日

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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海外医療通信 2023年4月号


海外感染症流行情報 2023年4月


(1)全世界:新型コロナウイルス流行状況

23年4月は南アジアや中東で新型コロナウイルスの感染者数が増加傾向にあります(WHO Corona virus disease 23-4-20)。とくにインドでは、オミクロン株の新しい亜型であるXBB.1.16が拡大しており、それによって患者数が増えている模様です。XBB.1.16は現在、世界的に流行しているXBB1.5に近縁のウイルスですが、免疫逃避に加えて感染力がやや強い可能性があります。WHOも4月17日に、XBB.1.16の監視レベルを1ランク高くしました(WHO 23-4-17)。なお、日本では5月8日から新型コロナウイルスが5類感染症に移行されます。これに伴い、入国時に要求していたワクチン接種証明書や出国前検査証明書の提出が不要になる予定です。水際対策|厚生労働省|日本政府 (mhlw.go.jp)

(2)アジア:東南アジアでのデング熱流行状況

東南アジア各国でデング熱患者数が増加しています(WHO西太平洋 23-4-13)。マレーシアやベトナムでは2万人以上、フィリピンでは3万人近くの患者が確認されており、いずれも昨年同期の2~3倍の数になっています。一方、シンガポールでは約2000人と昨年よりも少ない数です。東南アジアはこれから雨季に入るため、患者数はさらに増加することが予想されます。

(3)アジア:中国での鳥インフルエンザ患者の発生

中国で今年2月末に、鳥インフルエンザA(H3N8)型に感染した患者が発生ました(WHO 23-4-11)。この患者は広東省の56歳女性で、病状は重症とのことです。感染源は家禽と推定されています。中国ではA(H3N8)型の患者が22年4月~5月に2人確認されており、今回の患者は3人目になります。なお、中国では鳥インフルエンザA(H5N1)型およびA(H5N6)型の患者も発生しています。

(4)アジア:フィリピンでジフテリアの患者が増加

フィリピンでは今年になりジフテリアの患者が増加しています(ProMED 23-4-20)。3月末までの患者数は昨年が3人でしたが、今年は33人で8人が死亡しました。このうち12人が首都マニラ周辺での発生です。ジフテリアは飛沫感染などにより拡大する感染症で、三種混合ワクチンによる予防が有効です。

(5)アフリカ:赤道ギニアとタンザニアでマールブルグ熱発生
前号で報告したように、アフリカの赤道ギニアとタンザニアでマールブルグ熱の患者が発生しています。赤道ギニアでは4月中旬までに患者数が38人(確定15人、疑い23人)になり、このうち34人が死亡しました(WHO 23-4-15)。この1ヶ月で患者数が9人増加しており、流行は国内の広い範囲に及んでいます。一方、タンザニアでは流行が北西部に限局しており、患者数は累計9人で1か月前からの増加は1人でした(WHOアフリカ 23-4-16)。

(6)アフリカ:ケニア東部でコレラが流行

ケニアでは昨年10月から東部のガリッサ州を中心に、コレラの流行が発生しています(英国National Travel Health Network 23-3-31)。3月末までに患者数は7350人で、うち116人が死亡しました。首都ナイロビでも患者が確認されたとの情報があります(ProMED 23-3-25)。ケニアに滞在する際は飲食物の摂取に十分注意してください。

(7)中南米:アルゼンチンで蚊媒介感染症が増加
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスなどでデング熱の患者が増加し、今年は4月上旬までの患者数が4万人になりました。(英国 Fit For Travel 23-4-19)。同国ではチクングニア熱の患者も1000人以上発生しています。前号でも報告したように、今年は中南米全体でデング熱やチクングニア熱など蚊媒介感染症が増加しており、滞在中は蚊に刺されない対策を十分にとってください。

(8)中南米:チリで鳥インフルエンザの患者発生

3月中旬、チリ北部で鳥インフルエンザA(H5N1)型の患者が発生しました(WHO 23-4-10, 21)。患者は53歳男性で重篤になっています。現在、 世界的にトリの間でA(H5N1)型の流行が拡大しており、南米ではヒトの患者も、昨年12月にエクアドルで初めて確認されました。今回の患者は南米で2人目の事例で、家禽などから感染したとみられています。

日本国内での輸入感染症の発生状況(2023年3月6日~23年4月9日)


最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査 
2023年 (niid.go.jp) を参考に作成しました。新型コロナウイルス感染症の輸入例については、厚労省発表の検疫事例 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況、検疫事例)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)を参考にしています。

(1)経口感染症:輸入例として細菌性赤痢3人、腸管出血性大腸菌3人、チフス5人、赤痢アメーバ3人、A型肝炎2人、E型肝炎1人、ジアルジア1人が発生しています。チフスはミャンマー、パキスタン、インドでの感染、A型肝炎はインドでの感染でした。

(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱が8人発生し、前月(3人)より増加しました。感染国はインドネシア(4人)、マレーシア(2人)、フィリピン、タイ(各1人)でした。マラリアの感染は1人(シェラレオネで感染)、チクングニア熱も1人(インドネシアでの感染)でした。

(3)新型コロナウイルス感染症: 23年3月26日~4月23日までに輸入例として206人が報告されており、前月(143人)より増加しました。このうちシンガポールからの入国者が113人と最も多く、それ以外はベトナム、中国、インド、台湾などからの入国者が多くみられました。

(4)その他:麻疹の感染者が2人発生し、インドネシアとタイでの感染でした。