インバウンドと地元住民、観光事業者が持つべき目線とは-KYOTOyui 近藤芳彦氏

  • 2023年4月12日

 最後に訪れたのは2月の石川県のモニターツアーでした。石川県白山市では修学旅行生に向けた案内として、太鼓の生産日本一の企業さんや、ふぐの卵巣を禁断のグルメとして製造されている企業さん、そしてインバウンド向けに案内したい場所として獅子頭の絵付け体験や熊鍋のジビエ料理などの場所に行かせていただきました。


 モニターツアーの最後、商工会の方や観光連盟の方、行政の方等との意見交換の場で、ふと思った私の発言が地元紙にも取り上げていただけることになりました。その内容とは観光業をさせて頂いている立場として、そして地域をまとめておられる組織の方々の両面に言える事ですが、何のための事業なのか?なぜ観光客を誘致したいのか?を先ずはしっかりと考えるべきだと思ったのです。

 国や県はインバウンドを呼び込むための予算をかなり積み上げており、その予算を使うためにあらゆる事業者及び関係団体が地域に働きかけをされていると思います。私が感じるにはその事業者及び関係団体さんの良し悪しで、本来のあるべき事業の進め方ではない方向に行ったり、結果を悪くする恐れがあると思っております。

 予算があるからこの事業をやりましょう!や、とにかくインバウンドを呼び込み、地域を活性化しましょう!という軽い気持ち(かなり練りこんでおられる団体さんもおられると思いますが、あえてこのような発言をお許し下さい)で取り組まれ、結果がコロナ前の京都市のように観光公害、オーバーツーリズムと言われる地域に受け入れられない環境になってしまうと思うのです。

 白山市のツアーで素晴らしい神社へご案内いただき、地元の方や県外の方から崇敬されている場所だと感じたのですが、このような場所に良くも悪くもインバウンドのお客様が多数訪れたとして、崇敬されていた方々はどの様に感じるでしょうか?と問いかけをさせて頂いたのです。

 良く考えれば多くのインバウンドの方に来ていただいた事で経済効果をあげられるでしょうし、悪く考えれば地元や県外の崇敬されている方々が来なくなってしまうかも知れない。そのような事を想定して、どの様な取り組みをすれば良いか?をしっかり地元を含めて議論が必要だと思います。

 第1回目の寄稿で挙げていた和束町の取り組みで私自身も学んできた事ですが、住民の方々の協力なしでは今後求められる体験などの観光消費を上げられないと思っております。そして何より地域住民が観光客を受け入れる事で、喜んでいただける環境づくりが大切だと思っております。具体的には地域の方々が潤える経済効果、また第二の故郷のように観光客の方が会いに来てくれる喜びなど私たち観光業を営む者として忘れてはいけない事だと思います。

近藤芳彦
株式会社KYOTOyui代表取締役。トラベル京都代表。京都観光サポーター。1972年3月生まれ、大阪トラベルジャーナル旅行専門学校卒業後、旅行会社に3年ほど勤めるが、結婚を機に退職し、その後は他業種に就いたものの2006年に旅行業を立上げ、2016年には法人の観光業を営んでいる。趣味は「旅×仕事」です。