ANA国際線新ブランド「AirJapan」がシートなど発表、24年就航後の戦略は
ANAグループのエアージャパンは3月9日、就航準備を進めている国際線新ブランド「AirJapan」のシートや客室乗務員の制服などサービス概要を発表した。AirJapanは、FSCでもLCCでもない「いいとこ取り」のサービスを「Fly Thoughtful」をブランドコンセプトとして提供することを事業の根幹としてすえている。
座席はすべてエコノミークラスで、使用機材であるB787-8に対して324席を配置。7時間前後の中距離国際線を主戦場とする戦略から、シートピッチは32インチ(約81cm)とするなど快適さに配慮した。エアージャパン代表取締役社長の峯口秀喜氏は、「最大のポイントはシートピッチ」「最も重視したのは中距離国際線で快適に過ごせる居住性」などと語り、「LCCとは一線を画すゆとりある空間」と自信を示した。
シートは環境対策として軽量な合成皮革を採用したほか、カーペットも再生ナイロンを使用する。デザイン面では、ブランドカラーである「あけぼの色」のステッチも特徴とした。
またコンセントは設置しない一方、充電用のUSBポートはAタイプとCタイプの2種類を用意。シートモニターは搭載せず、旅客が自身のスマートフォンやタブレットを置けるスタンドを設置し、最新の映画やビデオプログラムなどの機内エンターテイメントをWiFi経由で無料で視聴できるようにした。ウェブブラウジングなど一般的な意味でのWiFi接続を有償とするかは未定という。
続いて有料販売となる機内食についてもコンセプトを説明。事前予約と機内WiFi経由での当日購入の両方に対応しており、事前予約ではANAケータリングによるオリジナルメニューのいわゆる機内食を、当日の購入については食品ロス削減のためフリーズドライやレトルトなどの製品を中心に提供していく。メニューの詳細は航空券の販売開始と同時に発表する考えだが、「空飛ぶ物産館」として日本各地の美味を届けていく。
制服は「完全ジェンダーフリー」、男性のスカート着用も
発表会では制服と搭乗時に流すボーディングミュージックも発表、制服については、日本らしさをデザインに盛り込み環境にも配慮した調達を実現したことに加え、時代の流れを反映して完全なジェンダフリーとして乗務員が自ら自分らしく自由に選択できるようにした。男性のスカート着用も想定している。またパンプスとフラットシューズ、革靴に加えスニーカーも選択可能という。
アウト/イン比率は7対3、ピーチとの棲み分け策
峯口氏は2024年2月の就航とその後についても戦略や方針を説明。就航地は成田から東南アジアの「需要の太いところ」を選んでいき、2025年までには関空から東南アジアにも就航を目指す。「需要」についてはあくまで訪日主体であり、日本からの出国需要との割合は7対3を想定する。
また路線展開やサービスではピーチと連携し棲み分けにも留意。シナジーではピーチとコールセンターを共有するほかピーチの国内線との接続も想定する。また棲み分けでは、基本的には東南アジアへの中距離路線に特化することが差別化となり、特に関空ではANAグループとしての国際線路線網の拡充に繋がるとの考え。
機材効率向上のためAirJapanとしても成田からの短距離線を就航するが、ここでもピーチのブランドが認知度を獲得している中国線を避け、関空からの短距離線については検討していない。関空の拠点化も考えていないという。
ロードファクターの損益分岐点については、フルサービスキャリアが6、7割が一般的でLCCは8割以上であるなかで、AirJapanはその中間を想定。価格については明言を避けたが、国内外のFSCやLCCと勝負していくとした。就航から3年以内の黒字化を目標に掲げており、就航先での需要獲得に向けてはこれまでANAではしてこなかった規模でマーケティングにも取り組んでいく。