国土交通大臣 斉藤鉄夫氏

  • 2023年1月4日

(観光立国の復活)
 観光関連産業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により最も深刻な影響を受けている産業の一つですが、観光は、人口減少が進む我が国にとって成長戦略の柱、地域活性化の切り札として期待されている重要な分野です。

 昨年の10月11日からは、いよいよ内外の観光需要を本格的に回復させ、観光立国の復活を図っていく局面となりました。国土交通省としては、
①全国旅行支援や第2のふるさとづくりなどによる「国内交流拡大戦略」
②消費額増加や地方誘客の促進等を図るための「インバウンドの回復戦略」
③観光地や宿の高付加価値化の計画的・継続的支援などによる「高付加価値で持続可能な観光地域づくり戦略」
という3つの戦略を総合的かつ強力に推進していきたいと考えています。

 第1に、「国内交流拡大戦略」として、全国旅行支援を昨年10月上旬から12月下旬まで実施してまいりました。全国旅行支援の実施により、日本人の国内延べ宿泊者数がコロナ禍前を上回るなど、高い需要喚起の効果が現れているものと認識しています。昨年に引き続いて、本年も、閑散期となる1月の3連休明けの10日から実施することとしており、今後も、需要動向や感染状況を踏まえつつ、全国的な旅行需要の喚起を着実に進めてまいります。加えて、近年の働き方や住まいのニーズの多様化等を踏まえ、テレワークを活用したワーケーションの推進や、何度も通う旅、帰る旅を定着させる「第2のふるさとづくり」、ユニバーサルツーリズムといった国内における新たな交流市場の開拓に取り組んでまいります。

 第2に、「インバウンドの回復戦略」として、円安のメリットも活かして、速やかに訪日外国人旅行消費額5兆円超を達成することを目指します。具体的には、大都市だけでなく、地方も含めた全国各地で特別な体験の提供や期間限定のイベント等を実施するとともに、日本各地の魅力を全世界に発信する「観光再始動事業」をはじめ、関係省庁の施策も総動員して集中的な取組を行ってまいります。その際、旅行者の意識変化を踏まえながら、インバウンドの消費額増と地方誘客促進に向けた取組を進めるとともに、観光消費の旺盛な高付加価値旅行者の誘客に向けた地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりについても、しっかりと取組を進めてまいります。

 第3に、「高付加価値で持続可能な観光地域づくり」の取組を進めてまいります。現在、観光地・観光産業の再生・高付加価値化に向けて、宿泊施設や観光施設のリノベーションなどの取組を支援しているところですが、更なる取組の推進のため、単年度ではなく複数年度にわたる事業実施を可能にすること、新たに面的DX化の取組を支援対象に追加すること等の制度拡充を図ったところです。また、地球環境に配慮した旅行を推進するとともに、自然や文化等の地域の観光資源を保全・活用したコンテンツの造成・工夫、受入環境整備等を通じて、持続可能な観光地域づくりを進めてまいります。これらの取組を通じて先進的なモデル地域を形成し、観光SDGsの取組を世界に向けてアピールしてまいります。
これら3つの取組に加え、昨年10月に開催された観光立国推進閣僚会議における岸田総理からの御指示も踏まえ、2025年をターゲットに、我が国の観光を持続可能な形で復活させるため、新たな「観光立国推進基本計画」を本年3月までに策定します。

 引き続き、観光立国の復活に向けて、しっかりと取組を進めてまいります。

(各分野における観光施策)
 昨年11月に、関係業界団体によって国際クルーズ運航のためのガイドラインが策定されたことを受け、昨年12月から本邦クルーズ船社による国際クルーズの運航が再開されました。また、本年3月からは外国クルーズ船社による運航再開を予定しています。クルーズの本格的な再始動に向け、関係者間で連携し、安心してクルーズを楽しめる環境づくりを一層推進してまいります。
景観・歴史まちづくりについては、景観計画や歴史的風致維持向上計画の策定を促進し、良好な景観を形成するとともに、地方公共団体が取り組む地域固有の歴史・文化・風土を活かしたまちづくりに対する支援を引き続き進めてまいります。

 本年は、「道の駅」は制度創設から30年を迎える年であり、2025年までの「道の駅」第3ステージも折り返しとなります。地方創生・観光を加速する拠点へ「道の駅」の進化を目指すモデルプロジェクトや、施設の老朽化等の全国的な課題に対する支援を進めてまいります。
また、令和3年に閣議決定された、「第2次自転車活用推進計画」に基づき、私を本部長とする自転車活用推進本部を中心に、政府一体となって、自転車通行空間の計画的な整備、シェアサイクルやサイクルトレイン等の普及促進、ナショナルサイクルルート等を活かしたサイクルツーリズムの推進等、自転車の活用の推進に向けて取り組んでまいります。

 鉄道分野においては、訪日外国人旅行者にも日本の鉄道を利用してより快適に旅行を楽しんでいただくために、多言語による案内表示・案内放送の充実、トイレの洋式化、クレジットカード対応型券売機や交通系ICカード等の利用環境整備、大型荷物置き場の設置等の取組を進めてまいります。

(IRの整備)
 IRは多くの観光客を呼び込む滞在型観光の拠点となるもので、観光立国の実現に向けて取り組むべき重要な施策の一つです。IR整備法に基づき、IRの整備に必要な手続きを丁寧に進めてまいります。

(航空ネットワークの維持・確保等)
 世界規模での新型コロナウイルス感染症の感染拡大等による影響により、航空業界を取り巻く経営環境は引き続き厳しい状況にあります。また、水際対策の緩和等により、徐々に航空需要は戻りつつあるものの、国際線をはじめとして未だ回復途上にあり、航空会社・空港会社等は依然として厳しい経営状況となっております。

 航空ネットワークは、公共交通として国民の社会経済活動を支えるとともに、インバウンドをはじめ、ポストコロナの成長戦略にも不可欠な「空のインフラ」です。航空会社や空港会社等の経営基盤強化を通じ、航空ネットワークの維持や成長投資の促進を図るため、来年度の当初予算等の成立を前提に、航空会社に対する総額500億円規模での空港使用料や航空機燃料税の軽減、空港会社に対する無利子貸付等を行うこととしています。

 また、水際対策の緩和等による今後の航空需要の回復・増加を見据え、昨年12月に成立した補正予算等を活用し、空港における感染リスクの最小化やグランドハンドリングの採用活動・人材育成等を支援するなど、引き続き、受入環境整備を推進してまいります。

 ドローンについては、昨年12月に有人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)を可能とするための制度が開始しました。レベル4飛行の実現に向け、関係機関とも緊密に連携し、新制度の運用に万全を期してまいります。また、いわゆる空飛ぶクルマについては、2025年の大阪・関西万博に向けて、機体の安全性、操縦者の免許、交通管理、離着陸場等に関する環境整備を進めてまいります。

(戦略的・計画的な社会資本整備)
 社会資本整備については、我が国の持続可能な経済成長を確実なものとするため、将来の成長基盤となるストック効果の高い事業を戦略的・計画的に推進してまいります。その際、現下の資材価格の高騰等を踏まえ、必要な事業量を確保してまいります。
(中略)
 航空分野においては、首都圏空港における年間発着容量約100万回の実現を目指し、必要な取組を進めてまいります。具体的には、成田空港については、第三滑走路の整備等に向けて、地元自治体等の関係者と連携するなど、機能強化の実現に最大限取り組んでまいります。羽田空港については、2020年3月から新飛行経路の運用を開始しており、引き続き、騒音・落下物対策や新飛行経路の固定化回避に向けた取組、丁寧な情報提供を行ってまいります。また、拠点空港としての機能拡充に向けて、羽田空港アクセス鉄道の整備等を実施します。近畿圏空港については、関西空港の容量拡張等に向け、地元自治体等の関係者と連携し、関西空港等の飛行経路の見直しについて検討を行うなど、引き続き、2025年大阪・関西万博等に向けた機能強化を推進してまいります。地方空港については、福岡空港の滑走路増設事業、那覇空港の国際線ターミナル地域の機能強化、新千歳空港の誘導路複線化事業などを推進し、ゲートウェイ機能の強化を図ってまいります。