新潟・高柳じょんのび村、HIS出身の社長が立て直しに挑戦、赤字経営から半年で脱却
2015年以来の黒字化を達成
人とのつながりから得た大きなサポート
旅行業の経験を生かし地方創生に関わる業界人も多いが、旅行会社から飛び出して新潟県柏崎市にある赤字経営の複合宿泊施設、高柳じょんのび村の立て直しに挑んでいるのが吉村英治氏だ。2021年10月から運営会社じょんのび村協会の代表取締役社長となり、第3セクター運営の施設で雪深い冬の集客、人手不足などの問題を抱えながら、エイチ・アイ・エス(HIS)で培った人脈やプロモーション手法を駆使し、黒字化にチャレンジしている吉村氏に話を聞いた。
吉村英治氏(以下敬称略) 九州出身で、防衛大学校卒業後、1998年にHISに入社しました。当時のHISは急成長中で、航空会社まで立ち上げる勢いがありました。カウンターでの接客から始めたのですが、アウトバウンド販売が楽しく、やりがいのある仕事にはまってしまいました。支店長、新宿本社の統括、航空仕入れや九州営業本部での営業リーダーなどを経て中四国事業部長となった後、本社の国内仕入本部にて新規開拓を担当していました。
吉村 中四国事業部にいたとき、アウトバウンドだけでは今後生き残るのは難しいと感じ、地域創生に取り組みました。偶然じょんのび村の社長の募集を見て、求める人材が私がやってきたことにマッチしており、何かの縁と思って応募しました。任期は来年度3月末までです。
吉村 1992年に高柳町の地域創生のために作られました。柏崎市への合併後は市が所有、市が大株主の第3セクターのじょんのび村協会が受託して運営しています。貸別荘から始まり、豆腐やがんもを作る工房や温泉、旅館もある複合施設となって、広さは東京ドーム1個分。本館に温泉があり、つり橋を渡った先に貸別荘があります。
吉村 堪えた1年でした。HISはトップダウンの社風でスピード感がありましたが、ここは平均年齢が60歳以上の先輩が多い施設で、やりたいことがすぐできる環境ではありません。着任してすぐは朝礼で私の顔を見なかったり、どうせいなくなるといった目で見られ、スタッフや行政機関・地域住民への気遣いもあって全身に蕁麻疹ができ、嗚咽することもあったほどでした。
また物事を急に変えるのは支持されないので、少しずつ確実にと謳って変えてきました。例えば原価を見える化し経費の見直しやスタッフの意見を取り込んだ特産品を盛り込んだ新食事メニューの開発のほか、全体会議やスタッフ総出の大掃除など施設のスタッフ全員で取り組むことで一体感が生まれてきました。