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コロナで旅行会社の信用失墜、回復に向けた努力を-旅行産業経営塾OB会シンポジウム

「旅行会社を使わないほうが格好いい」に対抗
5年後の旅行業界を旅行会社社員・学生が議論

シンポジウム出席者以外はオンラインで参加した

 旅行産業経営塾OB会はツーリズムEXPO2022の業界日である9月23日、会場内でシンポジウムを開催した。テーマは「5年後の観光業「勝ち残り戦略」~大学生と業界人が描く未来図」で、基調講演は日本航空(JAL)や韓国観光公社(KTO)、日本総合研究所などを経て現職に就いた、神奈川大学国際日本学部教授の島川崇氏が担当。さらに観光業を志す学生と旅行会社の社員が6グループに分かれて5年後の観光業に関して討論し、発表をおこなった。

 シンポジウムの冒頭に登壇した、旅行産業経営塾OB会会長でブルーム・アンド・グロウ代表取締役の橋本亮一氏は、シンポジウムについて「現役の観光を学ぶ学生と旅行業界の若手・ベテランという幅広い人を交えて議論をするのは初の試み」と強調。「5年先を想像するのは難しいが、旅行業界経験者の硬い頭ではなく、若い人たちの柔軟で斬新、真っ白な発想を取り入れながら、観光業界はいかにあるべきか、忌憚なく意見を言ってほしい」と話した。

旅行会社の信頼回復へ、効率化重視の傾向に懸念も

神奈川大学国際日本学部教授の島川氏

 基調講演ではまず、島川氏が「コロナで旅行会社は大いに信用を失墜した」と持論を展開した。同氏はGo To トラベル事業について触れ、旅行業界にとってはプラスになったが、人々が旅行に行く「お客様」と旅行を控える「市民」に分断されたと分析。その上でGoToトラベル事業給付金の不正受給問題が起きたことで「お客様は『頑張って』と言ってくれるので(旅行会社は)支持されていると思うかもしれないが、市民からは敵視されている」との見方を示した。

 さらに、このほど東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関わる電通の汚職事件が起こったことで、「人々が隠れて理不尽なことをすることに対しすごく敏感になっている」と説明。特に「中抜き」という言葉に敏感になっているとし、「今まではあまり言われなかったが、今は『旅行業も中抜きしている』と見られていることに対し、旅行業側の危機感がない」と警鐘を鳴らした。

 ただし、島川氏は手数料については旅行者に理解してもらったうえで収受する必要があると指摘。とはいえ、「6000円のホテルを予約したら手数料は定額で一律5000円、という旅行会社もあった。海外旅行専門者が国内宿泊を取り扱ったときに起きたケースだったが、それを消費者側がどう見るかは理解しなければならない」と注意喚起をした。

 こうした状況を踏まえ、島川氏は「今後5年間で市民に対する信頼をもう一度勝ち得る、回復させることに取り組むべき」と主張。「DX推進やAIの活用で効率化・スリム化して生き残るのではなく、市民から尊敬され、信頼され愛される存在でなければならない。それが一番大切」と強調した。

紙パンレットは本当に不要?DX推進の弊害

 DX推進の取り組みについて、島川氏は「お客様のためにやっているはずだが、現在の効率化の議論はそのお客様目線の考え方が抜け落ちている」と指摘。例として今年3月末に紙パンフレットを廃止したジャルパックを挙げた。ジャルパックでは沖縄での体験コンテンツとしてオリジナルバス「JALうたばす」を運行中。専用のガイドが車内で三線の演奏や島唄を披露する人気コンテンツだが、紙パンフレットをなくしてダイナミックパッケージに移行したところ、4月以降の予約が激減し、ゴールデンウィークにも催行しない日があったという。

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