地域に分け入るJAL社員たち~山口県・前編~

  • 2022年10月27日

歴史ある彫刻の街、文化コンテンツに注力する宇部市
豊かな日本海の恵みに温泉も、知られざる魅力に溢れる長門市

 客室乗務員や業務企画職など、幅広い職種の社員が各都道府県の自治体等に出向している日本航空(JAL)。シリーズ「地域に分け入るJAL社員たち」では、出向者と自治体の担当者、それぞれの目線で地域の魅力や課題、相互への期待などを語っていただくことを通して、ポストコロナに向けた地域創生を考えていく。

 最終回は、本州最西端に位置する山口県へ。前編では、県の空の玄関口・宇部空港を擁する宇部市と、高台から海に連なる鳥居が印象的な元乃隅神社のある長門市を紹介する。

令和3年度に行われた「山口ゆめ回廊博覧会」の事業の1つ、「7市町のひかりの実」

山口県宇部市

観光スポーツ文化部 観光交流課 山下日菜乃さん

2018年にJALスカイ九州に福岡空港のグランドスタッフとして入社し、主にカウンターでの搭乗手続きや発券業務、発着ゲート内での搭乗案内業務などを行ってきました。

2021年4月より、山口県宇部市へ出向し、初年度は山口県央連携都市圏域の7市町で取り組む「山口ゆめ回廊博覧会」を主に担当、2年目は庵野秀明監督の出身地でもある宇部市でエヴァンゲリオンに関連するイベントや地域のイベントなどに携わり、観光の情報発信を担当しています。

-住んでみて初めて知った地域の特色や、お薦めの観光素材はありますか。

 住んでみて初めて知ったのは、宇部市が「緑と花と彫刻のまち」だということです。市内の様々な場所に200点を超える野外彫刻があり、自然と街並みに溶け込んでいる作品もあれば、突然目に飛び込んでくるようなインパクトのある作品もあり、まるで街全体が美術館のようです。特に2年に1度開催される「UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)」は、世界で最も歴史のある野外彫刻展として60年の歴史を誇ります。

 また、干潮時には約幅2km、奥行き0.7kmの広大な砂州が現れる「キワ・ラ・ビーチ」や、西日本最大級の茶畑の「藤河内茶園」、東京ドーム約40個分の広大な敷地に広がる緑と花と彫刻に彩られた「ときわ公園」など、豊かで美しい自然に触れられるのも魅力の1つです。

キワ・ラ・ビーチ

藤河内茶園

ときわ公園 彫刻の丘

-地域の課題や今後取り組んでいきたいことをお聞かせください。

 宇部市では山口県央連携都市圏域7市町との連携事業において、昨年度、圏域内で200を超えるイベントを実施し、延べ48万人以上の方にご参加いただきました。一方で観光地の担い手・後継者不足のため、これまで育ってきた観光事業の継続が難しく、持続可能な観光資源の発掘も必要とされているように感じています。人気のあるコンテンツで期間が限定されたイベントも重要ですが、宇部市の既存の観光資源に多方面から新たなアイディアを追加して、長期的に継続できる仕組みづくりをすることで、宇部市をさらに魅力的なまちに進化させていくのではないでしょうか。

 近隣市町との連携をさらに強化していき、それぞれの市町の魅力や特色を活かして、山口県央部、山口県全体で県外からの観光客の増加や認知度向上を図っていきたいと思います。

観光スポーツ文化部 観光交流課 係長 北山千春さん

宇部市役所に入所して9年目で、うち8年間観光部署に勤務しています。市役所入所前は旅行会社に12年勤めていましたので、その頃の人脈や知識を活かせる観光部署の仕事は、とてもおもしろく、やりがいがあります。まつり、イベントの企画・実施、観光PRなどが主な業務です。

写真で手にしているのは「チョーコクン」。彫刻をモチーフにした宇部市のイメージキャラクターです。

-観光資源やお薦めの食、特産品などをご紹介ください。

 私のおすすめは「楠こもれびの郷」です。宇部市の北部地域にある施設で、温泉あり、農産物直売所あり、地元野菜がたっぷりの農家レストランあり、の複合施設です。自然豊かな里山風景と、迎えてくれるスタッフのみなさんの笑顔に、心から癒されること間違いなし!

楠こもれびの郷

 それから、ここで毎月第2・第4土曜日限定で販売している「ゆうれい寿司」もおすすめです!このあたりの郷土料理なのですが、具材を酢飯の中に挟み込み、まっしろな表面に柳に見立てたきゅうりの薄切りを乗せたユニークな押し寿司です。地元の人に古くから愛されてきた、素朴だけど、自然のうまみがぎゅっと詰まったおいしいお寿司です。

 また、楠こもれびの郷では「ゆうれい寿司作り体験」もできますので、ぜひ宇部市の郷土料理を作って食べて楽しんでください!

ゆうれい寿司作り体験

-地域が抱える課題や目標、それに対する取り組みについて教えてください。またそのなかで、JALからの出向者の方に期待することは何でしょうか。

 「地域の課題」はその地域の人だけでは解決できないものが多数あります。そこに住んでいる市民には当たり前すぎて見えていないことも、外から来られた方には見えることもあります。それは良いことも悪いことも。宇部市は昔から観光地ではないですが、外からお客様に来ていただくことで地域に交流が生まれ、地域の活性化に繋がり、それが我々住民の元気の素になります。

 出向で来ていただく方には、我々住民には見えていない、当たり前のようで特別な、地域の輝く素材をどんどん見つけて教えてほしいと思います。「こんなことができるのではないか」「こうしたらもっとよくなるのではないか」という自由な発想を持ち、地域の人々とたくさん交流してほしいと思います。

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