業界ニュースを振り返る ー 宿泊業は人は足りないけど金は出さない
今週のランキングは少し面白いことになっています。タイトルだけ見ると星野リゾートの分析ではホテルが供給過多となっている一方で、久保氏によると現在もホテル業界は人手不足であるという、なんとも不健全な状態になっています。
もちろん、星野リゾートの記事はちゃんと読めば、記事内で仰っているのは「大阪の宿泊市場が供給過多」と言っているのであって、必ずしも日本全国を指しているわけではありません。が、オリンピックの開催や中国からのインバウンドを狙って開業ラッシュになっていたホテルが、コロナによって全然需要が見合わないという状態になっているというのは想像が付きますし、今やほぼ国内需要しか見込めない状況であるにも関わらずホテルバンクの記事によればホテル数、部屋数ともに増加しているという状況です。
これらの情報などから推察される今の宿泊業界の状況は
・海外需要は激減(≒需要が減っている)
・それに対し供給はここ2年微増
・ホテル自体の数は増えているので人材のニーズも増えている
という状況なわけですが、ここでもう1つ厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査の概況」P.10を見てみると産業別では宿泊業、飲食サービス業の賃金が最も低くなっているという、摩訶不思議な状態になっています。
もちろん、飲食サービス業を含めていることもありますし、ホテルによっては家賃が不要などの福利厚生もあるので一概に賃金だけで待遇に関して判断することはできないというのはわかりますが、にしたって意味のわからない状況です。個々のホテルの状況はともかくとしても、業界としては「今後の展望が見込めるから新しく開業したいし、コロナでクローズしていたホテルもリオープンしたい!だけど人が足りないから応募します!金は出さないけど」ということです。その上ラグジュアリーホテルともなれば誰でもいいというわけではなく、事業柄夜勤などもあるシフト制で体力的にもキツイとなると、果たして誰が行くのだろうというのが率直な意見です。
まあこれは観光産業全体に言えることかもしれませんが、薄利多売な上に労働力集約型であるが故に、安く大量の労働力が求められる。こういったモデルはもうかなり厳しいのでしょう。今後人口が減る一方の日本において、優秀な人材は高収益の会社に高給で雇われるわけで、もう旅行でスケールさせることは非常に厳しい。その上、日本は経済的にも衰退していてなかなか海外からもっと安い人材をともいきません。
話が少し脱線しましたが、少なくともラグジュアリーホテルを名乗るような会社であれば、従業員への給与もそれなりにしていただきたいものです。そうでなければ人材市場で勝つことなんて不可能でしょうしね。