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UAサイパン線就航、マリアナ3島レポート(3)-ロタ&全体まとめ編

  • 2022年10月14日

 ユナイテッド航空(UA)によって9月1日から待望の直行便が復活したサイパン。マリアナ政府観光局(MVA)は「マリアナケーション」のタグラインや「超得キャンペーン」などによりその販売促進に注力中。9月第1週に実施されたメディアFAMのレポートで最終回となる第3弾はロタ島の視察内容と、サイパン島、テニアン島を含めた全体の課題や可能性を共有する。マリアナの基本情報とサイパンをテーマとした第1回はこちら。美しい自然と生々しい戦争遺跡の対比に心震えたテニアン島の第2回はこちら

「世界一」の評価も受けるテテトビーチ

3島随一の自然を誇るロタ島

 ロタは、サイパン島の南に南南西に約120kmの距離。サイパン/テニアン間よりは一回り大きな飛行機で約30分で到着する(グアムからも約30分)。島の面積は約85km2でサイパンとテニアンよりもすこし小さい。

 ロタ島でまず感じたのは、街並みの印象が他の2島とまったく異なること。その理由は植生で、他の2島も同様に緑豊かなのだがロタはより自然だった。

バードサンクチュアリからの眺め

 サイパンとテニアンは太平洋戦争時に米軍が遺体などを隠すため上空からタガンタガンという植物を散布したそうで、たしかにテニアンでは特にそればかりが多く目についた。これに対してロタはサイパンとテニアンから離れていたこともあって戦火の影響は少なかったらしく、変な言葉だが「自然な自然」が残っているのかもしれない。

「世界一」のビーチも自慢の青い海

 ロタ島観光と言えばまずは「ロタブルー」と呼ばれる青い海で、水中洞窟「ロタホール」などでのダイビングが人気。今回は島の西側の港からボートで海岸沿いに3kmほどの場所でシュノーケリングを体験した。他での経験が皆無なので比較できないが、もともと苦手意識があって「30分も…」と内心思っていた人間が時間を忘れて夢中になったということは、それだけ簡単に景色を楽しめる場所だと言えるはず。

 また、ロタ島で外せないのがテテトビーチで、マリンダイビングフェアの「ダイブ&トラベル大賞(現マリンダイビング大賞)」で、記録を見る限り2019年2020年にベストビーチ部門を連覇(MVAによると2018年も)している。

テテトビーチ。多くの海好きが国内外のビーチに投票していながら2位に大差を付ける横綱相撲で、たしかにさすがの景色

「何もない」を贅沢に楽しむ

海水と真水が混じるスイミングホール

 このほかロタ島では「ソンソン村展望台」、天然の鍾乳洞「トンガ洞窟(日本統治時代には神威洞と呼ばれ野戦病院に)」、天然のプールのような「スイミングホール」、野鳥に出会える「バードサンクチュアリ」、そして高床式住居の柱だった巨石「タガ・ストーン(ラッテ・ストーン)」の石切場も訪問。いずれもそれを目的にロタ島を訪れるべきというほどではないが、ロタ島のゆったりした空気感のなかでは満ち足りた時間に感じる。

タガ・ストーン石切場。この巨石をどのように運び立てて積んだのか、古代のロマンを感じる

 おもしろいのは、ロタでダイビングセンター「RUBIN」を経営し今回の視察でガイドも務めてくれた山本博氏が「何もないのが魅力」と話し、それに呼応するかのように若いメディア関係者が「何もしないデジタルデトックスの時間をロタで過ごしたい!」と熱望していたこと。端から端まで直線距離で20kmの小さな島で、世界一の評価を受けるビーチで何もしない贅沢を堪能し、たまには海の中を見てみたりちょっと観光してみたり。それがこの島の楽しみ方かもしれない。

「何もない」ことの魅力は、滞在中に取材に応じてくれたアクア・リゾート・クラブ・サイパンの総支配人代理、Sachiko N. Gerrard氏も指摘。同リゾートでもサービスの中核として考えているという

食事もイチオシ

 観光以外では、ほぼすべての食事がしっかり美味しく感じられたことが個人的には最大の驚きだった。「キッコーマン」が代名詞として浸透するほど醤油が一般的だったり、もしかするともっと古く、チャモロの人々がもとは東南アジアから渡ったとされるルーツのせいかもしれないが、とにかく口に馴染む。旅の醍醐味は食だと考える人間にとってこの安心感は嬉しい。

「料理は余計なことをせず食材の良さを生かすのが一番」と考える層には間違いなく加点要素として勧められるはず。写真はサイパン島「Salty's」のロコモコ。チャモロ料理の定番レッドライスにココナツミルクとタロイモの葉のソースを合わせている

 それから、食事に限らず物価が思いのほか安く感じられた。例えばテニアン島で食べた揚げ春巻きは、1人では完食できなさそうなボリュームで14ドル弱。円安の状況下では、MVAの50ドルクーポンやダイビングとゴルフの無料キャンペーン、DFSの円安対策キャンペーンなどと合わせてアドバンテージになるだろう。

デスティネーションとして安さを売りにするのは諸刃の剣だが、燃油だけで4万円近くするようなタイミングでは大きな武器になる

ならではの魅力で勝負

 最後に可能性と課題について触れておくと、視察全体の感想として景色の良さや海の美しさはさすがの一言。その評判は何度も聞いていたのだが、それでも期待をゆうに超えてきた。食事の安心感もあり家族や知り合いにも是非勧めたいと感じている。

旧ホテル・ニッコー・サイパンは現在ケンジントン・ホテル・サイパンとして運営。遠くに見えるのはマニャガハ島

 しかし海や自然を売りにするデスティネーションが他にも無数にあるのも事実。日本から近いことも強みだが唯一ではない。その意味では、多くの人が集まる観光の拠点サイパン、戦争遺跡に圧倒されるテニアン、自然豊かで穏やかなロタという、「マリアナ」と一言で言っても実は表情が大きく異なる点や、「何もない」けれどものんびりとした空気感の中で癒やしを実感できることなど、マリアナならではの個性を生かすのが吉ではないか。

ワーケーションも有望な印象。半日ほど実体験してみたが非常に楽しい

 またところどころゴミのポイ捨てや廃墟が気になったが、臭いものに蓋をするのでなく世界のトレンドである「再生型観光」の機会と捉えたい。ゴミ問題は、旅行業界と現地が手を組むことで「旅行者がゴミ拾いをしてくれたらクーポンや特典提供」といったプログラムがすぐにでも実現可能だし、廃墟も例えば安全を確認したうえでサバイバルゲーム大会を開催したりアーティストとコラボレーションしたりするなど創造的な手立てによって逆に価値を生み出すこともできるはず。

 目下の課題はUA便の継続だが、マリアナの島々ならではの魅力が消費者に届けば1日3便から5便、デイリーへの増便もきっと可能と期待したい。

関係者がUA便にかける思いの大きさは滞在中にひしひしと感じられた