【シンガポール現地レポート】パンデミック終焉へ、入国者数は順調に回復、現地旅行会社の日本人求人事情も

  • 2022年10月21日

 さて、シンガポールの近況はここまでで十分にお分かり頂けたのではないでしょうか? 本レポートの後半は、トピックをガラッと変えましてシンガポールにある旅行会社の日本人現地採用向け求人内容を紐解いてみたいと思います。

日本人がシンガポールの旅行会社で働くなら?

 今回参考にするのは実際に某転職サイトで現在募集している、航空券・出張手配オペレーターのポジションです。

◆本求人の募集ポジションの主な業務
・シンガポール発の出張手配
・カスタマーサービス
・顧客訪問(必要に応じて)
・月2週間程度の緊急連絡先担当

◆求められるスキル
・2年以上の旅行会社または航空会社でのオペレーション経験
・一定の英語力(特にライティング)
・航空券の知識を有する
・チームプレイヤー

◆就業時間:9:00-18:00

◆給与:最大SGD 4,500まで(約45万円)

◆福利厚生
・賞与1ヶ月分
・業績に応じてプラスアルファあり
・有給年間14日(1年ごとに1日増加し最大21日まで)
・病欠年間14日
・誕生日休暇
・医療保険あり

以上が主な募集要項と求人条件です。

 まず、本求人広告は日本語で表じされている為、採用は日本人を優先しているということが伺えます。この企業が日系なのか外資なのか示されていないのですが、日本人を優先して採用したいということは恐らく、外資系だけれども顧客が日本人メインであるか、または日系の旅行会社で社内のコミュニケーションを日本語で円滑に行いたいという意思表示のように見受けられます。

 業務に関しては日本の旅行会社での担当業務とさほど変わらない印象です。シンガポール発の出張手配が主な業務と明記されているので、シンガポールからASEAN諸国への出張や日本への出張がメインになるのかもしれません。シンガポール発の海外出張と言ってもお隣マレーシアのクアラルンプールまで1時間、インドネシアのジャカルタまで2時間と日本国内出張のような飛行時間ですので、フライトスケジュールの都合によっては出張でLCCを活用することもしばしば(ディレイが怖いですが・・・)あります。この辺りは日本の国内出張と多少異なるポイントかもしれません。

 トラベルビジョンの読者で航空券予約手配に携わっている皆様は、本求人に求められるスキルや経歴を十分過ぎるほど有しているのではないでしょうか。1点コメントをさせて頂けるのであれば、英語力の部分です。英語力と書かれているとライティング、リーディング、スピーキング、リスニングの方の語学力を想像しがちですが、実際に海外勤務で重要なのは、日本語のわからない、日本人ではない、外国人(主にローカルのシンガポール人)の同僚や業務に関わるすべての人間とストレスを感じずにうまくコミュニケーションが取れるかというソフトスキルが、語学力以上に重要になってくると考えています。日本では当たり前のことが海外では当たり前ではないことに直面したり、その逆も然りです。文化の違いに適応することや理解を示したり敬意を払う姿勢も募集要項の「英語力」に含まれていると思っても過言ではないでしょう。

 就業時間の9:00-18:00は一般的で、昼食休憩は大抵12:00-13:00です。殆どのシンガポール人はランチを必ず食べ、1時間きっちり休憩します(お腹が空くと元気がなくなります(笑))。シンガポール人の同僚に安くて美味しい食堂やフードコートに連れて行ってもらえるでしょう。ここで気になるのは残業ですね。ここは個々の会社によって差があるので注意が必要です。面接時に平均残業時間や手当ての基準等を質問し必ずチェックする必要があります。シンガポール(海外)でこういった質問をするのは当たり前なので臆する必要はありません。

 給与は経験やスキルによって最大SGD4,500まで考慮可能のようです。現在は円安なので換算すると45万円程になりますが、近年シンガポールの物価や生活コストはインフレ傾向ですので、この給与レベルですと豪遊はできません。が、単身でシンガポールに渡り、一人暮らし(ただし間借り)をするのであれば生活は可能なのかなと思います。元々、東南アジアが大好きで間借りも気にならない、現地の生活にどっぷり浸かれるようだと、貯金もできるかもしれません。

Singapore Tourism Analytics Network (Stan)より引用

 福利厚生を見てみますと、オファー内容は一般的だと思います。賞与よりも大切なのが医療保険です。企業によって異なった従業員向け医療保険に加盟しており、適用範囲や充実度は様々ですが、ブラック企業でない限り、最低でも重症による入院や手術の様な高額な医療費用がカバーされる保険が一般的です。シンガポールの医療費は日本人には考えられない程高額ですので、福利厚生面でここが最重要ポイントになります。(数ヶ月前に息子がノロウィルスに感染し点滴の為に私立病院に3日間入院したところ、費用合計が60万円でした。保険が無かったらと考えると・・・ゾクッとしますね)。

 また、有給や病欠も一般的な日数に見えます。シンガポール人や外国人は有給の消化率は高いので、よほどのブラック企業体質でなければ、有給をフルに取得することに問題はないでしょう。旅行が好きで経済的に余裕もあれば東南アジアへの旅行や日本へ帰省などに有給を効率よく使えます。私の現職場の日本人同僚から最近聞いた話なのですが、彼女の外国人上司は有給を取りヨーロッパに旅行に行き、旅行から戻ったら体調壊しさらに数日病欠をとり、結局有給と合わせて2週間程近く不在だったということです。部下、上司、同僚関係なく、有給や病欠が取りやすい環境がシンガポールに根付いていることが本来の福利厚生なのかもしれません。

最後に

 日本の旅行業界の復活はこれからです。日本の旅行・観光業界がより一段と活気を取り戻し、更に発展、繁栄していくことをシンガポールより祈っております。

セントーサ島のビーチ