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タイ、23年は5つのセグメントへ訴求し目標125万人-ユッタサック総裁に聞く日本市場

  • 2022年9月26日

 2019年以来4年ぶりの東京開催となる「ツーリズムEXPOジャパン」に際し、タイ国政府観光庁(TAT)総裁のユッタサック・スパソーン氏が来日した。2022年はコロナ禍からリカバリーを目指すビジット・タイランド・イヤーであり、日タイ修好135周年の年でもある。ユッタサック総裁に新しい観光戦略である「Amazing Thailand New Chapters アメージングタイランド、新しい章を刻もう」の積極的な取り組みや日本市場への期待を聞いた。

タイ国政府観光庁(TAT)総裁のユッタサック・スパソーン氏

 ユッタサック氏は「タイにとって日本は、相変わらず重要な市場です。コロナ禍前の2019年を振り返ると、日本からタイを訪れた人は180万人、タイから日本を訪れた人も130万人にのぼりました。タイは、2021年7月からいち早く外国人観光客を隔離なしで受け入れるプーケット・サンドボックスを実施し、段階的に規制を緩和してきています」と振り返る。

 2022年7月にはタイ入国のための許可申請システムであるタイランドパスが廃止され、新型コロナの治療費等を含む医療保険への加入と同保険証の提示義務も廃止されている。一方、2022年9月7日以降、日本も帰国の際に3回のワクチン接種を条件にコロナ陰性証明書の提示も不要になった。

ユッタサック氏。日本の大学に留学経験もあり、日本語を話せる日本通でもある

 こうした現状について「2022年1月1日から9月20日までで日本から16万人の入国者を迎えています。これは国別の順位としては12位に位置しています。2022年末までに日本から35万人、続く2023年にはコロナ禍前の2019年の70%の水準となる125万人の方をお迎えしたいと思っています」という目標を掲げた。さらに「そのために日本の旅行会社のご協力も得て『今こそタイへ。新しい旅への誘い』というメッセージと5つの重要なセグメントに対して実施していきます」と語った。

 5つの重要セグメントは「コーポレート」の顧客増。「アクティブシニア」によりラグジュアリーな旅をしてもらう。「女性」に文化や食事など様々なコンテンツに触れてもらう。「若い世代」にスポーツやアウトドアアクティビティに挑戦してもらう。今までも一番多かった「FIT」の旅行者により長期で平均支出の多い旅を提案するというもの。

 日本人のタイでの平均支出は1日あたり6400バーツで平均滞在日数は9.79日。この平均支出は周辺の東アジア諸国と比較して低い水準だ。ホテルにはお金を費やす一方、観光・ショッピングにかけるお金が少ないという。ユッタサック氏は「より頻繁により長期にそしてより支出をしてもらうために取り組んでいかねばと思っています。また、リピーターが77%を占めて、初めてタイに来たという人の割合が23%と低いので30%にまで増やしたい。平均年齢が高どまりの男性に偏っているので、若い方にもっと来てもらえるような、コロナ以降の新しいタイのブランディングを打ち出していきます」と述べる。

 そのために、日本人の方の潜在的なニーズを把握して刺激していくことが必要だとして、たとえば女性に向けては、タイが安全で旅行しやすいというイメージを広めつつ、ファッション、スパ、美容、健康、メディテーションなど女性ニーズに合ったコンテンツを強化していく考え。

ツーリズムEXPO前夜にはタイ観光大使のお披露目を兼ねたレセプションも開催。タイ観光大使に就任した佐藤三兄弟はSNSなどでのシンクロアクロバット動画が注目を集めている

 TATでは強化ポイントを「NFT」と呼んでおり、NはNature(自然)で、単に自然に触れて寛ぐだけでなく、自然環境のありがたみを感じてもらうこと。FはFood(食事)で、ストリートからミシュランまで、自分の食べたい食事を探求してもらうこと。TはThainess(タイらしさ)で、タイのライフスタイルを自分の生活にも取り入れるインパクトを感じてほしいとしている。

 「5つのセグメントは、それぞれアプローチが異なります。コーポレートなら企業に対して、もう少し長く滞在してもらえるような提案をしたり、リタイア世代のシニアの方には、5ツ星ホテルに泊まる至福の旅をしていただきたいです。若い人に対しては、なかなか持てない会員制ゴルフ場でのプレイができる代わりに3つ回ってもらうとか。長期滞在するケースの多いダイビングで、初めてのダイビングライセンスをタオ島で取得しませんかなど、当庁から刺激となる提案をしていきます。そして。2023年には、コロナ前の2019年比で80%の2兆4000億バーツの観光収入と入国者2000万人を目指します」(ユッタサック氏)

 コロナ禍で懸念される観光業からの人材流出の問題には「コロナで、他の仕事に従事してしまっているガイドもいますが、FIT化が進むでしょうし、オンラインで情報収集したり、言葉の問題も翻訳アプリなどで解消できるようになってきています」としつつも、急激に観光需要が回復すると、ホテルやレストランの人材不足が問題になることは首相も周知しており今後対応をしてしていくという。また単に人数を増やすのではなく、クオリティを保つことが大切だとして、労働相とも協働して観光業に戻ってくる人や新しく観光業に従事する人への研修も実施していく計画だ。

ツーリズムEXPOジャパンのタイブース前で披露された華やかな伝統舞踊

 コロナ禍におけるパートナーとの関係については、全世界29の事務所にロックダウンをしている国においても3つのことに注力するように指示。コロナ禍は永遠に続くものではないので、忘れられないために努力をする「Top of mind」。パートナーとの絆を保つ「Keep contact」、たとえばシンガポールでは、事務所もロックダウンをしてしまったが、エージェントにタイ料理のデリバリーを配布したりしたという。

 最後は「Kick off Sales」、コロナの改善状況は一律ではないため、できる場所から回復を図るとして、ユッタサック氏は「2019年にタイに入国した4000万人のうち、1100万人は中国からでした。しかし、現在は中国からの入国は見込めないので、数値目標を達成するためにどこの市場に注力して補填すべきなのかを考えなければなりません。今回、コロナの規制が緩和されつつある日本に来ようと決断したのも、この点からです。今後、日本の方にはもっと来ていただけるであろうという期待を込めてなのです」と熱意を込めて語った。