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【弁護士に聞く】受注型企画旅行の「特別補償」、無手配日の扱いは?

  • 2022年8月22日

企画書面にも明示する必要性

 上記②につき注意すべきは、「無手配日があることとその日に生じた事故によって旅行者が被った損害に対しこの規程による補償金及び見舞金の支払いが行われない旨」は企画書面にも明示しておくことだ。

 特別補償規程では「契約書面に明示」とあるのは、無手配日のないことと無手配日中の事故は特別補償の対象外になることが受注型旅行契約の内容になっていることが必要なことを意味している。受注型企画旅行契約の部第5条1項で、企画書面とは、旅行者の「依頼の内容に沿って作成した旅行日程、旅行サービスの内容、旅行代金その他の旅行条件に関する企画の内容を記載した書面」とあり、契約書面では、「当社の責任に関する事項」が記載事項として加わっていることから(同第9条1項)、特別補償責任に関しては契約書面で足りると理解しがちだが、契約書面は契約締結後に交付される書面であることから、トラブル防止の観点からは企画書面に記載して交付しておくことが必要だ(実は、ややこしいことに旅行業法は、受注型企画旅行契約についても同法第12条の4で契約前に旅行中の損害の補償に関する事項を記載した旅行取引条件説明書面を交付しての説明を求めていることから、企画書面にそうした事項も記載して旅行取引条件説明書面を兼ねるようにしておくのが簡明である)。

最後に保険会社へ確認すること

 特別補償責任制度は、もともと保険とリンクしたものとして作られている。特別補償責任を旅行会社に代わって履行する特別補償保険は、旅行会社には加入義務はないが、資力の乏しい旅行会社が多くの企画旅行を扱っているときは、登録行政庁は特別補償保険への加入を業務改善命令として命じることができることになっている(旅行業法第18条の3第1項5号)。そのせいもあってか、多くの旅行会社は生命、身体の損害に関しては特別補償保険に加入している。

 したがって、無手配日を設定するからには、その間は特別補償保険の保険期間を短くしておかないとコストダウンに繋がらないので、加入している保険会社に無手配日を保険期間から差し引くよう求めることが肝要だ。保険会社によっては、保険約款の定めではなく内規で扱っているところもあるようなので、事前に確認しておく必要がある。無手配日は特別補償規程によって特別補償責任を負わず、保険のリスクは0であるから、保険期間に算入して保険料を徴収することはできないので、どの保険会社も応じなければならない。


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三浦雅生 弁護士
75年司法試験合格。76年明治大学法学部卒業。78年東京弁護士会に弁護士登録。91年に社団法人日本旅行業協会(JATA)「90年代の旅行業法制を考える会」、92年に運輸省「旅行業務適正化対策研究会」、93年に運輸省「旅行業問題研究会」、02年に国土交通省「旅行業法等検討懇談会」の各委員を歴任。15年2月観光庁「OTAガイドライン策定検討委員会」委員、同年11月国土交通省・厚生労働省「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」委員、16年1月国土交通省「軽井沢バス事故対策検討委員会」委員、同年10月観光庁「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」委員、17年6月新宿区民泊問題対策検討会議副議長、世田谷区民泊検討委員会委員長に各就任。