自然を学び、繋がり、行動する「協働プラットフォーム」を-サステナブルアイランド石垣 田村陽子氏

  • 2022年8月24日

美しい島を末長く楽しむために、長期ビジョンでの解決策を探る

-今後、島の産業や行政に対してはどのようなアプローチをしていきますか。

田村 2018年に、陸からの負荷がサンゴ礁にどのような影響を与えるかという調査が石垣島で行われ、畜産、農業、下水がトップ3の汚染源だということが明らかになりました。対策としては、やはり行政が規制をしていくことだと思います。例えば沖縄県では「赤土防止条例」を作っていますが、建設地には厳しい基準があるのに、主たる流出元である農地には規制がない。政治的な理由もあると思いますが、ルールを決めなければサンゴ礁を守ることはできません。

 ハワイでは州が危機感を持ち、数年前に家庭排水も全て下水道に繋ぐことを法律で決めました。時間はかかりますが、すべては観光と産業と地域の長期的な持続的発展のためという統合された目的があります。日本の公務員の縦割りの仕組みでは、与えられた仕事で認められることが第一で、長期目線の目標の達成はしづらいのだと思います。ですが、私たちが発信することで石垣市にもこうした取り組みを知ってもらい、政策に反映してもらいたいと思っています。

-サンゴの保全活動としては移植の話もよく耳にします。

田村 移植は取り組みとして見えやすく、環境省も進めていましたが、実は不確実性が高い方法です。定着率が低く、台風でも壊れてしまいますし、水質が悪かったり病気になると一斉に全滅してしまうのです。多様性や生態系を守りながら進めるにはメンテナンスが不可欠です。

 サンゴは、たとえ折れていても環境が良ければ雑草のように育ちます。それができなくなったのは水温の上昇もありますが、陸からの汚染物で生態系が壊れ、サンゴに適さない環境になってきているからです。個人ができることもありますが、やはりまずは行政が音頭を取り、適切な水質基準を保てるよう各産業に働きかけることだと思います。移植も大切ですが、その効果を上げるためには、水質を変えることが必要です。

-やはり行政が動く必要があるのですね。

田村 他団体で活動されている方たちにも、それぞれの考えや着眼点があり、ガイドラインも様々です。取り組まなければならないことが明らかな問題でも、実際にやろうとすると立場の相違などでなかなか難しく、そのストレスで諦めてしまう人も多い。だから行政の主導が必要なのです。

 昨年、様々な業種や立場のメンバーで「地域循環共生圏」というより長期的なビジョンで調和を探る「やいまSDGsシンポジウム」が民間主導で開催されました。これは毎年継続され、行政を巻き込んだ協議会を作ろうという計画もあります。

-観光産業に従事されている方々に向けてメッセージをお願いいたします。

田村 島の自然や景色を楽しみにこられる観光客の皆さんも、その自然を壊したいとは思いません。観光産業が率先して自然を思いやる取り組みをすれば、気持ちよく楽しめ、リピートしたくなるはずです。地域の自然の多様性へインパクトを抑えた特別な体験には高価値がつく時代ですし、それを牽引してほしいなと思います。

 ですが自然のことは地域の人に聞かなければ見えないものもあります。先ほどお話ししたリーフランドプロジェクトや認証店を、観光産業とタッグを組んで連携できたら、面白いツアーができるのではないかと思います。ローカルの人と触れ合って一緒に土をいじったり、海に行ったり。石垣島の美しい部分を楽しみながら、地元の本当の姿を体験するというコンビネーションです。この体験の部分にプロジェクトで紹介した方を起用していただいてもいいですし、直接SIIにご相談いただけたら、サステナブルツーリズムの観点からのアドバイスや人材のご紹介もできると思います。

-ありがとうございました。