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自然を学び、繋がり、行動する「協働プラットフォーム」を-サステナブルアイランド石垣 田村陽子氏

  • 2022年8月24日

美しい島を末長く楽しむために、長期ビジョンでの解決策を探る

 石垣島の自然とその裏にある環境問題の両方を目の当たりにしてきた3人の仲間が、「20年後も島が豊かで幸せであるように」と立ち上げたサステナブルアイランド石垣(SII)。代表を務める田村陽子氏は海洋管理の専門家で、世界各地で環境保全プロジェクトに関わってきた。「皆が学んで繋がって行動していく、協働のプラットフォームを目指したい」と語る田村氏に、団体の取り組みや観光産業との関わりについて聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

田村氏。インタビューは石垣島最大規模のテレワーク施設「チャレンジ石垣島」で実施した

-はじめにご自身とSIIの紹介をお願いいたします。

田村陽子氏(以下敬称略) 普段は海洋関係のコンサルタントの仕事をしています。東京海洋大学を卒業した後、ワシントン大学で修士号を取得しました。大学では沿岸管理や人が自然に与える影響を研究していたため、以前はJICA関係のコンサルタント会社や生物多様性を保全する国際NGOの日本支部に所属し、発展途上国を中心に沿岸管理の指導をしていました。現在は、MSC認証という持続的な漁業で獲られた海産物に与えられる国際認証の審査員や、その認証企業への漁業改善プロジェクト(FIP)のアドバイザリーを主として行っています。

 この仕事はパソコンがあればどこでもできるので、8年前から石垣島に移住しました。地域の人たちと楽しく過ごすなかで環境問題の深刻さも感じていたのですが、コロナ禍で自由な時間ができたとき、もっと環境に目を向けなければならないのではないかと改めて考えました。同じように考えた友人3人が集まり、2021年に立ち上げたのがSIIです。

 石垣島のサンゴ礁は、このままではあと10年でなくなるかもしれない危機に直面しています。私たちがこの島をずっと楽しむためにも、持続可能な島にしていくにはどうしたらいいか。SIIでは長期的な目線で今できることから始めていこうという考えで、主に、環境問題に関心を持つ人に向けた情報発信を行っています。とはいえ、なかなかウェブサイトを見てもらうことは難しいので、日常的にインスタグラムをアップして、それを入口にウェブサイトに掲載している詳しい情報を見てもらう流れを作っています。

-団体の長期的な目標は何でしょうか。

田村 「20年後の石垣島が、社会も経済も環境も豊かで幸せであるように」というのが目標です。サンゴ礁が今後10年で衰退してしまったら、ダイビング業界やシュノーケル業界はどうなるでしょうか。海が汚くなってしまったら観光客も来ないでしょう。目指しているのは、皆が学んで繋がって行動していく、協働のプラットフォームです。現在は任意団体ですが、ゆくゆくは社団法人にしたいと考えています。

-行政からの依頼に基づいてではなく、個人で活動しているのですか。

田村 はい、現状は完全な手弁当です。是非、石垣市などにも連携してもらいたいと思っています。イベントで勉強会を開き、動画のアーカイブなども行っているのですが、素人なもので、先日も録画した動画の音声が聞こえづらいなどのトラブルがありました。行政に協力を得てもう少し大きな予算で運営ができれば、技術的にも助かるのではないかと考えています。

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