JNTO、観光客の誘客プロモーションが足踏み
日本政府観光局(JNTO)の中山理映子理事は、定例記者会見でインバウンドの現状と観光客の受入再開に対する取り組みの方針を説明した。その内容からは、観光客の受け入れは再開したものの訪日旅客は増加せず、訪日プロモーションも新たなフェーズを開始できていない難しい状況がうかがえる。
日本政府の水際対策の緩和により、6月10日から外国人旅行者の観光目的の日本入国が条件付きで認められたが、6月の入国者数は12万400人にとどまり、4月の13万548人、5月の14万7000人を下回っただけでなく、19年同月比でも4.2%と、4月の4.8%、5月の5.3%を下回った。この点について中山理事は、添乗員付きのパッケージツアー限定でビザ取得という条件のハードルが高いといった声を、JNTO現地事務所を通じて聞いているとしたうえで、「コロナ禍前に自分の好きな方法で日本へ来ていた旅行者は自分で行きたいと考えているはずで、トレンドは個人旅行だ。個人旅行再開を待ちたいとの声が多い」とし、個人旅行の再開が鍵になるとの見解を示した。
観光客の受入再開の告知と誘客プロモーションについては、BtoC、BtoBtoC、BtoBの各取り組みが説明された。BtoCでは受け入れ再開のプレスリリース発信や紙面広告による再開のアピールを実施。BtoBtoCでは航空会社や旅行会社と連携した共同広告を展開し、航空路線の復便を支援する考えだ。またBtoBでは旅行会社の招請による商談会・視察を実施する。
BtoBtoCの航空会社と連携したプロモーションについては、フェーズ1として5月30日からは「日本を旅行先として想起させるためのイメージ訴求の情報発信を実施している」(海外プロモーション部・松田博和氏)。しかし個人旅行受入拡大の発表に合わせて開始する予定のフェーズ2の実施には至っておらず、需要の取り込みを図る販売促進広告の展開や各航空会社の予約購入サイトへの誘引は本格化していない。
BtoBの旅行会社の商談会や視察は、具体的には3年ぶりのリアル商談を組み込みハイブリッド開催する「VISIT JAPAN トラベル&MICEマーケット2022(VJTM&VJMM2022)」を活用。「VJTM&VJMM2022に海外旅行会社のバイヤー約50名を招待し、視察旅行にも参加してもらう」(市場横断プロモーション部・氷室志穂氏)とのことだ。
またJNTOでは経済効果や潜在需要の可能性が高いMICEをインバウンド回復の柱の1つに掲げており、アフターコロナへ向けた取り組みを強化する方針だ。JNTOによれば20年は国際会議が延期・中止となるケースが58%だったのに対し、21年は延期・中止が31%に減少し、オンライン開催やハイブリッド開催が60%を占めた。このことから「オンライン会議の普及により、コロナ後もハイブリッド会議が定着することが想定される」(MICEプロモーション部・川崎悦子氏(崎はたつざき))と分析し、対応を強化する考えだ。また都市のMICE競争力を向上するためのコンテンツ充実事業として、日本の強みである「知識と人材の集積地」に焦点を当てた冊子を制作し、16のグローバルMICE都市の最新情報と魅力を紹介している。そのほか10都市(仙台、千葉、横浜、大津、奈良、大阪、岡山、広島、北九州、福岡)のバーチャル視察動画も制作している。