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乗り越えろ人材不足。接客現場も本気の働き方改革-リクラボ 久保亮吾氏

  • 2022年8月1日

より一層の働き方改革を

 在宅、時短、オンライン会議、テレワークなど、先端的な企業ではコロナ禍でぐいぐいと推進され世間に定着したこれらキーワードも、宿泊産業となるとどうも本格的な導入に至れていない会社も多いのではないでしょうか。管理部門では推進できても、接客を伴う現場でこれらを導入するのはなかなか抵抗があるかもしれません。「人事や総務の人間はテレワークできるけど、フロントは無理だなあ」とか、「ここのシフトはこれ以上変更のしようがないなあ」とか、そんな風にあきらめていないでしょうか。しかし、今こそ本気でこれまでの既成概念を壊し、「うちでは無理だな」とあきらめずにオペレーションの改革にトライしていくことが必要です。

 先日、福岡に本社を置く博多ホテルズにお邪魔する機会がありました。社名は「博多」なのですが、同社は北海道、関東、関西、中国地方にもホテルを展開するホテルチェーン企業です。

 同社ではカスタマー・インタラクティブ・センター(CIC)という部門を上手に機能させて、現場人員の効率化や子育て中の女性たちが働きやすい環境を実現していました。実際にCICで働く女性に話を聞くことができましたが、「たぶん以前働いていたホテル(別の企業)だったら、私は妊娠の段階で退職していたと思います」と話していました。その女性は時短で、土日も休むことができる環境だそうです。

福岡にあるCICの事務所

 CICでは全国のホテルの映像が常に画面に映っており、現地のスタッフがいなくても、このセンターからリモートで接客をすることができます。同社の運営するホテルでは基本的に午前中はフロントまわりにスタッフが常駐していません。客室階に上がって清掃したり、事務所で事務仕事を片付けたりしているからです。CICのスタッフの中には在宅の方もいて、東京の自宅から全国のホテルを見ている人もいるそうです。

 博多ホテルズの物件には以前は別のホテルだったものをオーナーが買収し、運営に入るというケースも多いのですが、リブランドに際してまずやることが客室内の電話機をすべて外すこと。「え? お客様は困るんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、用事のあるゲストは結局携帯で外線番号に電話をしてきます。それを受けるのはホテルのフロントではなくCICなので、常時館内に電話番状態のスタッフを設置する必要もなくなるわけです。緊急の用事や、顧客への接触が必要な場合にはすみやかにCICから現場のスタッフに連絡がいきます。

 財は集約して運用すると高効率になることは間違いがありません。各ホテル現場に散っていた人財をCICに集めてきたことが、そもそもこの制度が高い機能を発揮している要因なのだろうと私は感じました。また、福岡にいながら北海道のホテルの中を案内することもあり、ここでの仕事のレベルは高いです。

 ちなみにですが、博多ホテルズでは各ホテルの責任者である支配人に営業成績による評価基準を設けていません。つまり、そのホテルが儲かるかどうかは本社の経営陣の責任であり、現場の責任ではないことを明確にしています。

 「では何をもって支配人は評価されるんですか?」という私の質問に対する返答は明確でした。評価基準はいくつかあるのですが、中でも「スタッフをネガティブな理由で辞めさせないこと」が支配人の大切な評価基準になっている。そのために支配人は全スタッフと年に4回の面談をし、ともに各人の目標やミッションを決めていくことが求められるそうです。

 いかがでしょうか?今回ご紹介したのはごく一部ですが、コロナという脅威によって様々なテクノロジーが進化したように、「人手不足」という脅威を前にして、どこまで今までやってきた仕事を見つめ直して改革するか、その改革が現場スタッフの納得感を得られるものであるかどうかです。すでに勝負は始まっています!

久保亮吾
ホテル業界専門人材会社リクラボ代表。
立教大学卒業後、藤田観光株式会社入社。ホテルの現場経験の後、本社人事部人事企画課に在籍。その後、株式会社オータパブリケイションズに入社。週刊ホテレス編集部に在籍し、後に編集長を務める。 オータパブリケイションズ在籍時の2002年に就職応援団体としてリクラボを設立。2014年にリクラボを法人化し、厚生労働大臣認可を受け人材紹介事業を展開。