旅行の「不便益」とは?どんな旅行が記憶に深く残っていますか?-RT Collection 柴田真人氏

  • 2022年7月20日
空から見たオカバンゴデルタ

 海外での不便益もあります。例えば、アフリカのボツワナにある世界遺産オカバンゴデルタに行ったときです。羽田空港から出発し、シンガポールを乗り継いで南アフリカのヨハネスブルグへ、そしてヨハネスブルグからジンバブエのヴィクトリアフォールズ空港に向かい、そこから陸路でザンビアに入国してボツワナのカサネへ、最後はセスナ機に乗り、大地にポツンとあるエアストリップに着陸し、ようやくオカバンゴデルタに到着しました。その道中の長さや大変さ、そして不便さを感じる一方で、オカバンゴデルタに着くまでに見たものや感じたもの、到着した時の感情や印象、そしてそれまでに出会った現地の人たちなど、たくさんの体験ができ、たくさんの出会いがありました。東京からオカバンゴデルタまで仮に直行便で行くことができていたら、そのような体験や出会いはなく、深い記憶にはなっていなかっただろうと思っています。旅行における不便益、不便さのある旅行は、人の記憶に深く残っていたり、印象に強く残っていると改めて個人的に感じました。

記憶に残る旅とは

 移動もスムーズにできて、滞在中はトラブルもなくのんびりと過ごした旅行については、意外と記憶が薄くなっていることはないですか。東南アジアのビーチリゾートによく行きましたが、不便さもなく行ったこうした旅行については、深く記憶に残っているものは実はあまり多くありません。よくある話に富士山は頂上まで歩いて登るから達成感や感動がある、もし頂上までエレベーターやエスカレーターで行けたら達成感や特別感はなくなってしまうというものがあります。旅行に関しては、不便だからこそのメリットが少なからずあるのでしょう。

 先日、旅行業界の知り合いが岐阜県中津川にある渡合温泉のランプの宿に宿泊し、電気も電波もない時間を過ごしていました。その時にTwitterでつぶやいていた言葉がとても印象深いものだったのですが、そういった電気も電波もない環境では「自然とコミュニケーションが増えた」というのです。不便さがあると自ずと人が集まったり、コミュニケーションを取り始めたり、それが自然と生まれるというものです。とても面白い発見ですよね。

 旅行会社が実施する3泊4日とか4泊5日などのツアーで不便益を入れ込むのは、短い日数という時間の制限がある分、とても難しいでしょう。最適化されたルートを効率よく回るというのが大前提にあって、私たち旅行業者側もそういった固定概念に囚われていることがよくあります。不便益の良さを伝えて理解してもらうにはハードルがとても高そうです。

 読者の皆さんは、旅行における不便益の体験はありますか?旅慣れた読者の皆さんの記憶に深く残っている旅行体験には、もしかしたらものすごい不便益があったのかもしれません。もしあれば、是非コメント欄で共有をお願いします!

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。