マリアナ、観光回復に全力、日本に過去最大規模の予算投下

  • 2022年7月11日

 マリアナ政府観光局(MVA)は、9月のユナイテッド航空(UA)による成田/サイパン線直行便の就航を契機としたコロナ禍からのリカバリーに向け、日本市場に過去最高規模といえる予算を投下してB2B、B2Cの両面で強力に需要喚起に取り組んでいく方針だ。

(左から)MVAジェネラルマネージャーの一倉隆氏、MVA理事でTRIP日本部会長の須永智氏、MVA理事副会長のグロリア・キャバナ氏、MVAマネージング・ディレクターのプリシラ・M・ヤコポ氏、MVA理事会会長のエルスベス・ヴィオラ・アレプヨ氏、MVA理事でTRIP会長のアイバン・クインチョチョ氏

 7月8日に対面とオンラインのハイブリッド形式で旅行業界向けセミナーを開催し、さらに旅行業界メディアの取材に対して説明したもので、予算は現地を訪れる日本人旅行者数がピークだった1996年、1997年と同規模を用意。「TRIP(Tourism Resumption Investment Plan/観光復興投資計画)」の一環で、観光が「唯一の経済ドライバー」であるマリアナとして、最重要市場である日本と韓国での誘客活動を強力に推し進めることで旅行観光産業の立て直しを目指す。

 MVA理事会会長のエルスベス・ヴィオラ・アレプヨ氏は「世の中が元の生活に戻りつつあるなか、日本とマリアナの観光の絆を再構築するためには皆様のご協力が欠かせない」と挨拶。そして、感染の少なさやワクチン接種率の高さ、安全ガイドラインなどによる安心感、3時間半で到着可能な身近さ、気候や豊かな自然による癒やしなどマリアナの強みがコロナ後のニーズに合ったものとし、「まだご不安を感じる方もいらっしゃるかもしれないが、マリアナは安心してお楽しみいただける旅行先。皆様のお越しを心よりお待ちしています」と語った。

 UAの直行便は9月1日から成田/サイパン線で週3便を運航。同路線は2018年5月にデルタ航空が撤退してマリアナがオフラインとなり、2019年11月にスカイマークが就航したがすぐにコロナ禍となってしまった。今回UAが就航を決めた背景には、TRIPでの需要喚起の要として直行便復活を目指して航空各社に打診をした結果、UAが手を挙げたという。

セミナーの冒頭で挨拶するMVA理事会会長のエルスベス・ヴィオラ・アレプヨ氏。セミナーは会場に約50名が集まったほか、オンラインでも約150名が視聴した

 リカバリーに向けては、ハワイやグアムに比べて感染や死亡が少なく抑えられていることなどで安心・安全を打ち出しつつ、まずは旅慣れたリピーター層の取り込みを目指す。特に、回復が選考すると予想されソーシャルメディアなどでの情報発信力も高い20代と30代の女性を重視するほか、アクティブシニアやダイバー、ゴルファー、ウインドサーファーなども有望と見ており、ワーケーション需要にも期待する。

 具体的には、新たなタグライン「マリアナケーション」を採用し、コロナ禍での心身の疲労を3時間半で到着可能な常夏の島で癒やす「マリアナ休み、とろう。」を訴えていく。すでにMVA日本ジェネラルマネージャーの一倉隆氏がカメラマンらと現地を訪れてプロモーション用の写真素材などを撮影。

 また、販売促進に向けてはUA直行便を利用するパッケージツアーを対象に、9月から11月まで1名あたり1万円のインセンティブを計画中で、期間の延長も視野に入れている。グアム経由を含めUA便利用ツアーの販売数を評価するブッキングコンテストも準備しており、詳細はメールマガジンなどで案内していく。

 このほか、パッケージツアー利用客に対し、MVA会員の現地ホテルやレストラン、ショップ、アトラクションなどで利用できる50ドルのバウチャーを全員にプレゼント。こちらも11月までが期限だが、延長も選択肢という。

 また現地では、帰国時のPCR検査を無償提供しており、検査会場の追加も予定。サプライヤー側でも、Tギャラリア サイパン by DFSが円安の影響を和らげるため1ドル125円のレートで商品を購入できるようにしたり、特別セールや無料送迎サービスを用意したりする例があるという。

 さらに、グループ需要に特化したキャンペーンも用意し、15名から50名の団体を対象にミールクーポンや地上トランスファーの割引などを追加で提供。このほか、旅行業界経由でのリカバリー策ではFAMツアーも積極的に実施していく計画だ。

 消費者をターゲットとしたプロモーションにもこれまで以上に力を入れていくことが決まっており、すでにゴルフやダイビングなどの専門メディアが現地取材に出ているほか、テレビや新聞とのタイアップも検討中。今後も、旅行に関連するプラットフォームにはすべて可能性があるという。また、「特に口コミが最も重要」との考えですでにインフルエンサーの招聘も始めている。

 なお、日本は入国制限の緩和が他国より遅れており、さらに記録的な円安も海外旅行需要自体の先行きに不安感をもたらすが、MVA理事のアイバン・クインチョチョ氏はそれらが障壁となることは認めつつ、TRIPが「他のデスティネーションを超える集客に繋がると期待している」とコメント。9月の就航までの時間を有効に使って競争に打ち勝ちたい考えを示した。

 また、MVAにとっては直行便の安定的確保が最大の課題だが、まずはUAの週3便を確実に維持しつつデイリー化を狙う。他の航空会社も引き続き働きかけを続け、東京以外の都市からのチャーターなども目指す考えだ。