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「FSA」トップに聞く:アルパインツアーサービス代表取締役社長の芹澤健一氏

顧客と現地、それぞれと強固な信頼関係構築
次世代がいきいき働ける業界に期待

-今の業界の若い世代をどのように見ていらっしゃいますか
随所に飾られる写真はすべて社員の手によるもの

芹澤 30代から40代の今中心となって働いている世代は、いろいろな意味で苦労していると感じる。高度成長期に中心世代だった上司から「俺たちの時代は何万人送った」などとマスプロ的価値観で言われても、時代はまったく変わっているからだ。上から押し付けるのではなく、もっと若い力を信じて後押しする企業姿勢が必要。得意分野や得意エリアを尊重し、若い世代が躍動感をもって楽しんで取り組める業界であってほしい。

 そのためにはアウトバウンド業者が航空座席や客室が取れない苦しい状況にあることを理解したうえで、アウトバウンドがもっと促進される構造を作らなければならない。当社では、例えば写真が得意な社員がいれば「山旅フォト倶楽部」を作ったり、現地踏査に行かせたりすることで、社員のモチベーションを上げる努力をしている。当社ではいやいや仕事をしているスタッフはおらず、これこそが旅行業の本質だと感じている。

-ご自身の時代と現在とで変化していることはありますか

芹澤 私がツアーリーダーをしていた20代はアナログの時代で、実際の景色を見たり、登頂することでお客様が感動の涙を流すことも多かった。その感動を一緒に分かち合えたことはその時代なりに良かったことと言えるだろう。しかし今は良くも悪くもデジタルの時代。お客様はテレビやパソコン、タブレットなどでドローンが撮影した雄大な風景を事前に幾度も見ており、実際に行っても感動や反応は昔とは違う。そういう意味では、今の世代はお客様と感動を分かち合う一体感を感じにくいかもしれない。

-今後の課題としてはどのようなことをお考えですか

芹澤 今、海外のどの山に行っても日本の2、30代は歩いていない。若い人が外に出る仕組みをトレッキングを通してできないものか、次世代のマーケットをどう作っていくか、社員全員で考えるべき大きな課題だ。

 また、欧米はもちろん、中国を中心にアジアからも多くの旅行者が現地の山を訪れているので、現地の手配業者も旅行者の多い国を注視せざるを得ない。当社は現地のサプライヤーと良好な関係を構築しているが、これからも日本のマーケット状況の変化を捉えながら、現地とのつながりをより一層太いものにしていかなければという危機感はある。

-最後にインバウンドについてはどのようにお考えでしょう

芹澤 現地サプライヤーの多くはインバウンドとアウトバウンドの両方を手掛けているので、彼らのお客様を日本に送りたいと言ってくることもある。リクエストベースで受けているが、どの国にとっても日本は今魅力的なデスティネーションに映っており、やり方によっては大きなビジネスになる可能性がある。ただしその場合は山だけでなく、日本の地域性を理解した別のスキルを持った人材が必要で、今は準備中といった段階だ。

-ありがとうございました