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インタビュー:18年ツアコン大賞、ルックJTB添乗員の村尾さん

添乗力とは「人に寄り添う力」
富裕層ツアーから学生旅行まで、「3ツ星」めざす添乗人生

-添乗中に気をつけていること、お客様に喜んでもらうための工夫などについてお聞かせください

村尾 ツアーの集合場所となる成田や羽田でお客様とお会いした時点で、全員のお名前は覚えておくこと。これは最低限のマナーですね。これができなくなったら、添乗員を辞めようと思っているくらいです。お名前とお顔を覚えたらそのツアーは8割方成功と言えると思います。

 呼び方にも気をつけており、「様」ではなく「さん」とお呼びし、その距離感を大切にしています。ツアー中で最も大切なことは「お客様に寄り添うこと」ですね。


-お客様に寄り添うために意識していることはありますか

村尾 まず、お客様が何をしたいかを把握することですね。思い出は形にならないものなので、ご自身の希望をすべて消化して帰ってほしいと思っています。たとえば食事。スペインのサン・セバスチャンのツアーで25種類の料理が出てくるコースがあり、食べ終わるまで3時間半かかったことがありましたが、「どれひとつおいしくない、時間を返してくれ」と言われたことがあります。本当に美味しいものを探している方は星付きレストランではない。

 一方で、星付きレストランを巡ることに価値を置いている方もいらっしゃる。何度もご一緒すると、値段ではなく、その方の好みが分かってきます。その細かいところ、ひとつひとつをチェックして、自分の引き出しに入れています。

 提案の仕方にも気を使っています。「でも」「しかし」という言葉を添乗中は使わないようにして、まずは話を聞いたうえで、「こういうものもありますが、どうでしょう」と提案をするようにしています。

 若い添乗員は、よく「私はこんなにやっているのに」と言いますが、それはその人の勝手なこと。私も昔はそうでしたが、感情にコントロールされないようにして、冷静に判断することが大切だと思います。評価のウエイトはお客様が100で添乗員は0。お客様が望んでいることに応えて、心と体と頭を一緒に動かしながら、満足してもらえるようなことを提供することですね。添乗力とは「人に寄り添う力」ではないでしょうか。私もいまだに「寄り添えなかった」と思うときがあります。


-一度添乗員から離れて、上田市の観光協会や酒造の観光部で働いていますね

村尾 36歳のとき添乗日数2000日で添乗員を一旦やめました。両親の介護など家庭の事情もありました。ちょうどそのとき、長野新幹線が上田市に開通するタイミングで上田駅の観光案内所に誘われ、所長として3年間務めました。その後、主人の親戚が営む酒井銘醸で観光部長となり、7年間務めました。17人のスタッフにうまく動いてもらうよう色々工夫した経験が、今の添乗員の仕事に活きていると思います。

 添乗員をやめるときですが、私の後輩がその人柄だけでツアーをうまくコントロールしているのを見て、「完敗した」と感じたんです。13年間の添乗でそれなりに自信はあったのですが、「私の知識や経験は必要ないものなのか」と思いました。でも、「3ツ星添乗員をめざす」と目標を達成しないまま辞めてしまったので、後悔が募ってきました。そこで、子供から手が離れるところで添乗員への復帰を決めました。40年間淡々と添乗員を続けていたら、今とは違っていたかもしれません。