インタビュー:日本旅行代表取締役社長の堀坂明弘氏

中核分野で「オンリーワン」へ
「リアルエージェント」として店舗も重視

-オンラインでの旅行予約が増加するなか、店舗を持つ「リアルエージェント」としてどのようにビジネスを展開していきますか

堀坂 インターネットでさまざまな情報が手に入る時代なので、旅行者がインターネットで情報を仕入れて店舗で商品を予約する、または店舗で相談してインターネットで商品を予約するような「ネットとリアルの融合」を進めていかなければならない。

 「赤い風船」「マッハ・ベストツアー」といったパッケージツアーや、我々が提供するサービスのイメージは店頭で作られている。今やシニア世代もインターネットを使いこなすようになってきているが、高付加価値商品については「店舗でスタッフに相談をしたい」という要望がある。そういう点で、お客様に働きかけられるのは「リアルエージェント」だからこそだ。

これまで、店舗については採算性に基づき割り切って整理してきた経緯があるが、今後は店舗ネットワークを活用して実現できる目標を考えていきたい。我々には日旅サービスや日本旅行オーエムシートラベルなどのグループ会社があり、規模は小さいながらもそれぞれが店舗ネットワークを持っている。次期中計では、グループ全体の店舗ネットワークを意識した取り組みを盛り込みたい。

 インターネットで航空券や宿泊施設を予約し、旅行会社を介さずに旅行する場合は、事件が起きてもお客様の自己責任となるが、旅行会社を介する場合は、トラブルが発生しても我々がフォローする。こうした安心・安全に関するサービスの提供はお客様へのアピールになる。我々としても、防ぎきれない事象に直面したときに初動対応が迅速におこなえる体制作りをしたい。


-国内外の仕入れ環境が厳しくなるなかでの貴社の取り組みを教えてください

堀坂 今後はますます仕入れが重要になる。収支を見極めながら、リスクを取って、航空機のチャーターなどを今後も継続していきたい。

 また、多様なお客様のニーズに応えるため、付加価値の高い宿泊施設などの仕入れも強化する。トワイライトエクスプレス瑞風や、宿泊施設の「特別室」のように、お客様が「ある程度お金をはらってもいい」と思える素材を仕入れ、他社では太刀打ちできない商品を提供していきたい。


-他業種との協業についてはどうお考えですか

堀坂 鉄道会社や航空会社、自治体など観光に関わる企業や団体との協業は当然考えている。現在は具体的な計画はないが、ストライクゾーンを広く持ってビジネスパートナーを探したい。

 また、海外展開としては今年2月にインドネシアの旅行会社であるジャバト・インターナショナル社を子会社化した。今後もこうした取り組みを進めていきたい。


-任期中に達成したい目標などはありますか

堀坂 前職の鉄道会社では、毎日一定のお客様に鉄道を利用していただいていた。一方、旅行会社は台風などの災害やテロ事件といった外的要因でお客様が減少することがあり、需要獲得のために営業しなければならない。就任からの約半年間 で旅行事業に取り組んできたが、それなりの手応えを感じ、やりがいを持って進んでいけるという気持ちになっている。

 私は日本旅行を、社員がやりがいや夢を持ち、前向きに突き進んで行けるような会社にしたい。多少は手間がかかるが、社員の意見や感覚を取り入れるため、朝礼に出るなどできるだけ現場を訪れて社員との接点を増やしている。次期中計は現場の社員の思いも具体的に盛り込んで、分かち合えるものにしたい。


-ありがとうございました