インタビュー:楽天トラベル事業国際営業統括部部長の幅屋太氏
海外事業をアジアNo.1に
宿泊施設との関係強化で「数だけでなく深さも」追求
-海外旅行市場の現状についてはどのような見解をおもちでしょうか
幅屋 昨年は円安が進みインバウンドが増加したことで、日本市場に対する航空座席の割り当てが少なくなるなど流れが変わった年だった。そうしたなか、楽天トラベルの取り扱いでは、ハワイと台湾、タイ、ベトナムの4ヶ国が好調だ。特にハワイと台湾は伸び率が高い。また、下半期はグアムも復調していきている。
台湾は、韓国や中国が落ち込んだことで取り扱いがとても伸びた。台湾は観光や食事を含めたパッケージツアーの利用は減っており、現地でのオプショナルプランですら、旅行者が何に参加して良いのかわからないぐらい多様化しているため、我々としてもFIT向けにとても売りやすい。
またハワイについては、日本の海外旅行人口が減少しているなかで、非常にリピーター化が進んでおり、堅調に推移している。宿泊施設側もFIT旅行者の利便性向上をめざし、アーリーチェックインサービスを組み込むなど、受入環境の整備に取り組んでいる。
-宿泊施設との関係についてはどのようにお考えですか
幅屋 我々は良い部屋のカテゴリを良いプランで売り切ることを大切にしている。そうすることで、宿泊施設にとっては単価の高いクライアントを紹介されることになり、メリットが大きい。我々としても、最近では、大手ホールセラー向けにあらかじめ確保していた部屋の在庫を減らしたと宿泊施設側から言ってもらえるようになり、仕入れがしやすくなった。
吉田茜氏(以下、敬称略) また、4ベッドの部屋や角部屋、オーシャンビューだが低層階の部屋など、パッケージツアーでは販売が難しい部屋をねらって仕入れている。宿泊施設との契約やコンサルティングを担当するITC(インターネット・トラベル・コンサルタント)が、各宿泊施設を訪問して仕入れを実施。部屋にこだわりのあるFITが増えているので、できるだけそうした人々が求めている部屋を契約するようにしている。楽天でしか販売していない部屋のカテゴリは多くある。
幅屋 販売促進の取り組みとして、宿泊施設に対し、カスタマイズ可能なウェブサイトページを提供している。普通のOTAでは、宿泊施設がページを作る場合、広告として作成するため費用が発生することが多いが、我々は宿泊施設に8ページ分を無料で提供し、制作権限も渡して、好きなようにアピールしてもらっている。
吉田 ただし、すべてを任せているわけではなく、例えば「女性がターゲットの場合はこのようなページを作っていきましょう」とアドバイスをしている。
また、国内と同様にITCが直接、宿泊施設に訪問している。これほど宿泊施設側とコミュニケーションをとっている旅行会社は、きっと他にないと思う。
幅屋 宿泊施設に足しげく通い、良いところを見つけていく。これにより、宿泊施設側がはっとするような発見をすることもあれば、我々の担当者が「これいいじゃないですか!」と見つけることもある。
このほか、宿泊施設との関係強化に向けては、実績や利用者からの評価が高い宿泊施設を表彰する「楽天トラベルアワード」の実施や、契約施設向けに会報がわりの小冊子の発行をおこなっている。これまでは、日本の宿泊施設向けにしか提供していなかったが、先ごろ新たに海外向けも作成した。日本語と英語、中国語、韓国語の4言語で対応していて、電子書籍としてメールでお送りしている。これは非常に、関係強化につながっていると思う。