訪日2000万人、オールジャパンで取組を-ガイドの質向上も
地方への誘客強化、地方同士の連携も
ガイドなどの質向上が課題、新免税制度に期待
都市に宿泊集中、オールジャパンに拡大へ
高品質なガイド不足、レベルごとの棲み分けを
シンポジウムではJNTOの小堀氏が「現実的に取り組む課題」として、宿泊施設や通訳案内士などの確保を挙げた。これを受け、吉村氏は「受入体制については非常にシリアスな課題」との認識を示した。同氏は、東京は訪日外客2000万人体制になったとき、1日1万室不足するというあるシンクタンクの発表を例示。ホテルの建設の話もあるが、宿泊施設で外国人が占める割合は全国で2割、東京でも3割といい、「宿泊施設の2割から3割しか使えない前提で、どうしていくべきか現実的に考えるべき」点を強調。都市部に集中する宿泊者について、オールジャパンで受け入れていく必要性を説いた。
通訳案内士の確保については、特にアジア言語が不足している状況を説明。「ガイドの数が足りているという話もあるが、アクティブガイドであるか、明日お願いできるのかが重要」とし、登録ガイドのうち、常に仕事を頼めるアクティブガイドは半分以下であることを課題として挙げた。
また、外国語による日本文化体験・観光ガイドを提供しているNPO日本文化体験交流塾の米原氏は、ガイドの質にかぎらず支払われる料金基準が同じである点を問題提起。通訳案内士には得意分野やレベルごとの差があるため、各人に見合った能力で仕事を割り当てる必要があるとした。
同氏は通訳案内士のレベル向上のための研修制度の必要性についても言及。まずは短時間のショートガイドで経験を積み、その後1日の都内観光や旅程管理能力が必要となるスルーガイドを任せるなどの仕組みを提案した。さらに、「通訳案内士には日本の文化の基本や魅力を伝える知識、理解力が必要。特殊な固有名詞がわからなくても説明はできる」とし、「1000単語で内容をしっかり伝えられるガイドを意識的に育てていかなければならない」と話した。
加えて、米原氏は現行の通訳案内士制度について問題点を指摘。「国が国家試験で信頼できるガイドとしているからには、品質保証はとても大切」だが、勉強不足のガイドもいることから、認定は質の高いサービスを提供できるガイドに限ることも検討すべきではと示唆した。通訳案内士の外国語試験免除条件を緩和する取り組みについては「英語が下手という苦情や、多言語については非常にレベルが低いという苦情がたくさん来ている」現状に触れ、「大変危惧している。数を増やすとクオリティはどう保てるのか」と危機感を述べた。
日本文化体験交流塾では年300回の研修を実施。独自の制度で語学力や文化への知識などを判断し、スキルアップするシステムを導入している。米原氏は「ライバルが増えれば増えるほど良くなるのがインバウンド」と語り、「個人的には持っているノウハウを全部あげてもいい」と、自社のノウハウを積極的に開示し、訪日市場を盛り上げていく姿勢を示した。