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WTTC、その意義と今後の課題-旅行業界の変革にむけて

■規制緩和に向けた取り組み

サミット閉幕後の会見に臨むJTB代表取締役社長の田川博己氏

 サミットでは、国際交流の増加に向けた障壁として、ビザやオープンスカイなど規制緩和の必要性についても議論された。田川氏は、このうちオープンスカイについて、「日本は島国なので、どうしても飛行機か船を使わなければ出入りができない」とし、政策としても重要であるとの考えを説明。その上で、「オープンスカイがある程度進めば、これからやるのはクルーズ」と語った。

 田川氏はサミットの会期中にシンガポールの観光大臣と話をしたといい、それも踏まえて「日本とシンガポールの間に、地中海やカリブ海のようにクルーズが何十隻、何百隻と運航される、そういった流れを作っていくことが大事なのではないかと思っている」と言及。出入国の手続き改善などを含め、規制緩和に向けてJTBとしても積極的にアピールしていきたい考えを示した。

■日本の旅行業界の変革に向けて

 旅行業界全体としての取り組みについて田川氏は、「JTBが今、交流文化産業という概念でDMCをめざす戦略を事業の骨子としているが、旅行業が持っているポテンシャルはすべてそこにあるではないか」とし、旅行会社がめざすべき方向は一定であるとの考えを説明した。

 田川氏によると、「この40年間は市場が成長して、素材を売るとお客様が買ってくれる、特に21世紀に入ってからの10年間はそういう時代だった」ものの、それだけではより便利なオンライン販売に負けてしまうのが現状だ。

 これに対して田川氏は、1960年代に当時の国鉄と日本交通公社が東北の祭の日にちをずらして「東北三大祭」とした取り組みが、数十年を経た今でも効果を生んでいることを例示。こうした取り組みが「本来ツーリズムに働く人間の根本的な仕事だと思う」と語り、それをしなければ「デジタル社会の中で旅行業は必ず埋もれる」と警鐘を鳴らした。

 その上で田川氏は、サミットが開催された2012年を、「根本的な仕事」を旅行業界全体で推進するための「元年」にしなければならないと強調。田川氏としても日本旅行業協会(JATA)への働きかけなどの活動をしていきたいとの考えで、9月のJATA国際観光フォーラムでも、WTTCの新会長に就任したTUI会長兼CEOのミッシェル・フレンゼル氏に「旅行業の果たすべき役割や、世界の中でどういう風に旅行業がこれから生き残れるかという点について基調講演をしてもらう」方針だ。