LCCと日豪旅行市場-ジェットスター・ジャパン講演を中心に
旅行会社、長距離LCCに参入の可能性
研究発表では、玉川大学経営学部観光経営学科講師の野村尚司氏が、日本発着の長距離LCC路線展開に関する考察を発表した。同氏は2012年2月、日本、オーストラリア、英国、オランダの大手旅行企業、航空企業幹部で、日本発の海外旅行事業展開に直接かかわる8名に聞き取り調査を実施。その結果をもとに、長距離路線への旅行会社の参入の可能性を示唆した。
聞き取り調査では、「旅行会社から見てLCCの利用は可能か?」という質問に対し、短距離路線はインターネットによる消費者への直販がほとんどであり、旅行会社が入る領域は小さいとの意見が見られた。その一方、長距離路線は「既存航空会社の航空座席がタイトな中、LCCの路線があれば旅行ビジネスに結びつきやすい」と期待する声があがり、乗り継ぎ便でのバゲージスルーサービスなど、旅行会社の事情を理解したサービスを求める意見もあったという。
野村氏は、日本市場においてLCCの長距離路線で旅行会社との強固な関係を築いた例として、JQの日本/オーストラリア線を挙げる。JQも当初のビジネスモデルでは直販7割旅行会社3割だったが、運航を開始してみると直販3割、旅行会社7割となった。こうした事例から、野村氏は日本の旅行の流通を考えると旅行会社の力は強く、旅行会社の参入する余地は十分あるとの考えを示した。
オーストラリアへの日本人旅行者数は2004年の71万人から減少傾向にあり、2009年からは30万人台に落ち着いている。訪豪旅行需要が減少し、日/豪間の座席維持が難しくなるなか、野村氏はLCCが長距離路線とでオーストラリアからクアラルンプールやシンガポール経由のヨーロッパ路線を就航するケースが増えていると指摘。オーストラリア在住の欧州系移民の「里帰り需要」があり、需要確保はできるとの考えだ。2011年9月の日本・オーストラリア航空当局間協議では、首都圏以外の空港で以遠権の自由化が同意されており、野村氏は日本経由路線の就航を促すことで「今後の日本/オーストラリア間の路線復活に向けて動いていくべきではないか」と締めくくった。
宿泊施設のコスト削減、ロー・コスト・アコモデーション活用で
研究発表会では、玉川大学経営学部観光経営学科教授の折戸晴雄氏が宿泊コストの削減という観点からオーストラリア旅行の促進の可能性を示唆した。折戸氏は海外旅行の阻害要因として旅行代金の高さがあげられており、なかでもオーストラリアでは観光促進に低価格実現のための新たなアプローチが必要と指摘する。LCCと同様に、低価格を実現させるため基本的な設備を用意し、タオルやテレビ、エアコンなど必要なアイテムは別料金で購入する宿泊施設を「ロー・コスト・アコモデーション(LCA)」と定義。LCAの積極的な利用がオーストラリア旅行の促進に資するのではとの考えを述べた。