業界ニュースを振り返る ー お偉方はDXをわかってますか?
さて、色々と突っ込みどころがあるというか批判されそうなJATAのニュースがでましたね。まあ色々と言いたいことはありますが、旅行そのものに対してのことであれば、もはや私より読者の方々の方が詳しいでしょう。私としては、やたらとJATAが触れたがる「デジタル」とくに「DX」というものをJATAが理解してないんじゃないかというのが、こういう記事を読むたびに気になってしまいます。
まず、DXの定義は経済産業省の DX推進ガイドラインでは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とされています。なんのこっちゃと思われるかもしれませんが、私がDXで重要なのに忘れられがちな点は2つあると思っています。
1つは「データとデジタル技術を活用して」と書かれているところです。「デジタル技術を活用して」ではないんですね。昔書いたこのコーナーでも紹介したことがありますが、フェンダー社のDX事例なんかは本当にわかりやすくて、この事例でいうと
1.データを集める
2.約半数が初めてギターを買うお客さんであると気がつく
3.eラーニングサービスでギター初心者に演奏を教えるアプリを作る
という風に、データを集めて、それによって仮設を立てて、デジタル技術を駆使してこれまでとは違うビジネスを確立する、つまり変革するわけです。これと逆のケースは本当によくあります。お客さんのデータも現場の意見(これもデータです)も集めずに、上層部が言いたいことだけ言ってできたシステムを社内で作ってみたは良いけど、使いにくくて結局誰も使わなかったり、無理に使って効率を落としたりといったようなの、経験ある方も多いんじゃないでしょうか。
忘れがちなもの2つ目は「改革」であるというところ、そして「競争上の優位性を確保する」ということです。元ニュース文中で「DXによる利便性や業務効率の向上」と記載がありますけれど、いやそれIT化でしょうと言いたい。もちろん必ずしもDXにより効率化するケースがないことはないですが、大抵の場合ってDXより手前のIT化によって効率化するんですよね。手作業で入力していたデータが勝手に入るようになった、契約書をいちいち郵送しなくてもよくなった、FAXで送受信してスキャンしていた内容を最初からチャットでできるようになった、みたいなところですね。
DXって言葉に触れて一番最初に出てくるのが「効率化」とかってのはDXの概念をどうも誤解しているんじゃないかという気がしてなりません。ここらへんは考え方次第と言ってもいいのかもしれませんが、少なくとも私はこの文脈で触れられるDXが目指しているものでNetflixやYoutubeといった娯楽に対して、観光が可処分時間・可処分所得の取り合いに勝てるような変革が起きるとは思えません。
観光産業でも、ベンダーさんでもある陣屋コネクトや地域観光でいうと「ニセコ」などはきちんとDXを実践されているように思いますし、大手の旅行会社の中でも当然深い理解をされている方というのはいらっしゃいます。それが上層部にまで伝わるのかはまた別の話ですが。「デジタル分野での遅れ」を認識されているのであれば、まずは学びから入っていただきたいものです。