お宿好きが思う「エージェントの在り方」-Loco Partners塩川一樹氏
「事前のインプットが内覧のスタート」
次に「内覧マエ」のポイントです。旅館・ホテルの皆様は常に数多くのお客様・取引業者に囲まれて商いをされています。しかも緊急度と重要度が高いタスクが同時に飛び交う環境ですから時間は極めて貴重です。だからこそいただく時間を価値あるものにするために、まずは事前にできることをできる限り済ませておくことが内覧のスタートになります。それが事前のインプットです。
あるホテルの方から「御社は何室なのですか」と、事前に調べればわかるような質問を平然と聞いてくるエージェントもいるのだよ、と聞かされて背筋が伸びる思いをしたことがありました。最低限の事前のリサーチはマナーとして行っておくべきです。塩川道場の勉強会では、例えばこのような観点で事前のインプットを推奨しています。
- ●基本として施設様のホームページと各種SNS発信状況と内容を一通りインプットすること。お宿が自ら伝えたい強みや特徴などが見えてきます。
- ●各サイトでの掲載状況やクチコミに目を通し、点数だけでなく、どのようなコメントがされているのかを把握します。まずこれら2つのインプットができると、立場が異なる両面からお宿の実情が推察できはじめてきます。
- ●余裕があれば、そのお宿のステークホルダーは誰か。ホテルであれば所有・経営・運営者、旅館であれば宿主はどんな人なのか。それぞれのステークホルダーの構造や歴史の理解。また携わる人(社長や総支配人)などのインタビュー記事などを見て、そのお宿の過去・現在とともに、未来を推察していきます。
こうしたインプットは内覧よりも前にできると、現地現物に触れた時に自然とお聞きしてみたいことが浮かんできたり、一歩踏み込んだ質問ができたりします。お互いの時間の価値を高めるためには、内覧マエのインプットがとても重要です。
「いざ!内覧中に意識しておくべきこと」
そして、内覧ナカでのポイントです。
- ●できればメモは紙でとること。スマホよりも早く、より多くの情報をメモできるから。
- ●一般のお客様にご迷惑を絶対にかけないこと。ロビーや廊下、エレベーターなどで、滞在中のお客様と居合わせることが当然あります。その時間・空間で最も優先されるべきはお客様です。お宿の皆様がお客様にされる気遣いと同化するつもりで、その時間と空間を壊さないようにします。
- ●写真撮影は許諾の上で。そして一般のお客様が映り込まないように。これはもう当たり前の作法ですね。
- ●ハードに汚れや傷がつかないように。景色が良いと窓に指紋をつけがちです。また、和室であれば畳のヘリは摩耗しやすいので踏まないように。ハードは経年で劣化するものですから、私たち内覧する人たちがそこで価値を落とさないようにすることは重要な姿勢です。
- ●水回り、景観、各所における設など、一般のお客様が気にされそうなところも忘れずにチェック。お客様とのお宿様との期待値のギャップを埋めていくのがエージェントの使命の1つですから、細部までこの視点を忘れずに。
- ●お宿のこだわりポイントを探してみる。ベッドの硬さやハンガーの材質、照明の使い方や照度、香りやフォントの大きさ、導線など。目に留まりやすいものを感じとるだけでなく、隠れたこだわりポイントを知ろうとすることも、お宿の思いや思想を理解すべきエージェントの大切な役割です。
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