itt TOKYO2024

価格上昇傾向の世界に取り残されたままでいいのか?-亜欧堂 堀口洋明氏

  • 2022年6月10日

 前回のコラム「宿泊施設が販売価格を上げていくべき4つの理由」に引き続き、今回も「価格を上げていく」ことについて考えてみましょう。今回は世界中のホスピタリティ産業関係者向けに高品質なベンチマークデータなどを提供しているSTR社の櫻井詩織さんにお話をお聞きして世界との比較を行ってみたいと思います。

日本の宿泊施設でも販売価格を引き上げていくべき

亜欧堂 堀口(以下亜欧堂) コロナ禍を受けて宿泊業界を取り巻く様々な状況が大きく変わってしまいました。需要の減少はもちろん、材料や燃料など各種費用の高騰や人手不足など問題が大きくなっていて、そんな中宿泊施設が生き残っていくためには販売価格(以下ADR)を引き上げる必要があると思っています。

STR 櫻井(以下STR) 今年は対面でのセミナーを再開することになりそうで、その時の議題もADRアップが一番トレンドになってくると思います。

世界の傾向はADR UPによるRevPARの確保

STR 世界の傾向として最近のトレンドは、世界のRevPAR上昇を先導してきていた中国の失速が挙げられます。オミクロン株の感染力とゼロコロナ政策の相性などもあり急速に落ちているところが前年までと変わっています。しかし他の地域では大半がRevPARは2019年より伸びています。

(クリックで拡大)

STR もうひとつのトレンドはインフレです。物価高と賃金上昇が特に欧米で顕在化してきており、インフレが進んでいます。これはアメリカの金融政策などの影響で、ウクライナ・ロシアの問題が全世界的な宿泊マーケットに直接的に及ぼす影響としては限定的だろうとみています。

亜欧堂 世界的なインフレ傾向を受けてもADRアップの傾向は続いていくでしょうか?

STR 2019年のADRと比べて現在どのくらい戻っているかといえば、前年の時点で、世界的にほぼ全ての地域で9割を超えています。本年は、失速中の中国と、比較的インバウンド構成比の高いアジア以外の8地域全てで2019年以上に、内5地域では2019年比で2桁ADRを上昇させています。

(クリックで拡大)

次ページ >>> ADR上昇の背景