カナダ観光局、「リジェネラティブ」な観光促進へ、先住民文化をアピール
カナダ観光局は4月28日、国際市場担当副社長のモリーン・ライリー氏の来日に伴いプレスミーティングを開催した。アメリカ以外は今回が初出張というライリー氏は、今後のキーワードとして「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型の観光)」をあげ、カナダの自然環境の維持、地元住民の生活・経済への貢献などに配慮し、観光促進をはかる方針を説明した。カナダ先住民観光協会(Indigenous Tourism Association of Canada、ITAC)と協力のもと、先住民族の文化のアピールにも取り組む。
ライリー氏は、カナダ観光局が新しいミッションとして、「観光はカナダ人の健康・ウェルビーイング、生活の質の向上に貢献すると同時に、観光客の人生を豊かにする意義のあるもの」を掲げていることを説明。ミッションを達成するため、カナダ人に観光の価値を理解してもらうとともに、「自然」「経済」「文化・社会」の3つのサステイナビリティを重視してリジェネラティブ・ツーリズムに取り組む方針を示した。
地元住民の観光への理解向上については、国内旅行キャンペーンを実施。カナダ人自らカナダの良いところを紹介するキャンペーンなどを開催するとともに、カナダを訪れる外国人富裕層向けの旅行会社とタッグを組んで「カナダ人の知らないカナダ」を紹介するプログラムをカナダ人向けに展開。早々に売り切れるほど好調に推移しており、将来的には日本市場に展開する見通しだ。
リジェネラティブ・ツーリズムについては、カナダ人が観光を通してが改めて自文化を見直し、再構築することができる点をメリットとして指摘。例として、言語を観光客に伝えることで自らの伝統や文化を再度認識し、より深く理解できることを挙げた。こうした方針のもとと、マーケティングについても変化させていくという。今後のターゲットについては「誰でも歓迎するが、カナダ人と交流したい人、カナダをもう少し深く知りたい人、3つのサステイナビリティを重要視している人をカナダに呼びたい」考え。今までは毎年の訪問者数を重視してきたが、今後はオーバーツーリズムにならないように配慮しつつ、長期的な視野で観光促進をはかる。加えて、地元住民の意見を知るためのアンケートもおこなう。
また、カナダを深く知ってもらうための観光素材として、今後はITACのリーダーシップの下、先住民の文化を積極的に紹介していく。ライリー氏は「カナダは文化のモザイクといわれる多文化の国」とアピール。カナダには300以上の先住民グループが点在しているが、各グループの言語やストーリーを体験できる場を紹介していく。今回の来日で旅行会社とも商品造成について話し合い、好感触を得たという。
日本市場は「戻る可能性が高い」、予算は2019年並みを確保
カナダ観光局では、最大市場であるアメリカに加え、英国、ドイツ、フランス、メキシコ、オーストラリア、日本、中国、韓国の海外9市場をターゲティングしているところ。ライリー氏はすでに米国からの旅行者は戻りつつあるといい、「順番的に次に戻りそうなのはヨーロッパ。アジア太平洋が戻るのは最後になる」との見通しを示した。日本については2024年、25年まで戻らないのではという懸念があったというが、日本の出入国ルールの緩和や航空便の増便などから「日本もリサーチ的には戻る可能性が高くなってきた」と期待を述べた。日本市場向けの予算については「2019年並みを確保した」という。
さらに旅行会社のなかでもカナダのパッケージ商品販売の動きが出てきているといい、今回の来日で旅行会社とミーティングをおこない、夏以降の準備を進めたところ。さらに、5月に3年ぶりに現地開催される旅行業界向けのトレードショー「ランデブーカナダ2022」にも期待がかかる。同氏によれば、全世界から300社程度の参加を見込んでいたが、4月下旬時点で580社の申し込みがあった。このうち日本からは約30名が参加する予定(在カナダの旅行会社、オペレーターは除く)。
なお、カナダは入国の14日前までにワクチンを2回接種していれば、入国前の新型コロナウイルス検査の陰性証明は不要で、到着後もランダムな検査に選ばれない限り検査は不要。検査に選ばれた場合も結果を待つ間の隔離は求められない。また、入国前に専用アプリ「ArriveCAN」にワクチン接種証明書をアップロードする必要がある。
モリーン氏は「カナダはほぼ完全にオープンしている」とアピール。一方で、「入国しやすくても各国に戻りやすいとは言いがたい」と語り、出向前72時間前の検査証明書の必要や、ワクチン2回接種者には3日間の隔離が必要なことなどを課題として語った。