インフルエンサーマッチングサービスから考えるSNS活用のヒント―SOCIALPORT 齋藤英一氏
インフルエンサーのキャスティングを支援し
インスタ活用の最適解へと導くサービスを提供
齋藤 インフルエンサーを探す方法は2つ。キャスティング会社やPR会社に依頼する方法は手間が少ないものの費用がかさみます。自社で探す方法もありますが、候補者を探すのは手間も時間もかかりインフルエンサーの良し悪しの見分けも難しい。フォロワーの多さだけに目を奪われてモデル系インフルエンサーを招待しても目的は達成できません。分野特化型のトラベルインフルエンサーと異なり、宿泊施設よりは彼女たち自身が目立ってしまうということがあるからです。
齋藤 現在会員登録しているインフルエンサーは800人。25歳~40歳のミレニアム世代の未婚の日本人女性が過半数。在留外国人も数パーセントいます。会員登録にはフォロワー数1000人以上という条件はありますが、より重要なのはエンゲージメント力(フォロワーとの関係性の強さ)です。
SOCIALPORTは「宿泊施設をつないでくれる便利なサービス」としてインフルエンサーに存在が認知されており、毎日多くの入会希望をいただいています。ただし誰もが会員になれるわけではなく影響力や投稿写真の質をスタッフが厳しく審査。影響度を測るためフォロワーとのコミュニケーションもチェックします。たとえば「ルームアメニティはどうでしたか」「子供連れで行きたいのですがファミリーフレンドリーでしょうか」といったコメントにしっかり対応しているのかを含め、コミュニケーションの濃さと深さを見ます。
フォロワー数と「いいね」の比率も見ます。一般的には2~3%とされますがSOCIALPORT会員は平均5~7%ほど。10%を超える方もいます。こうした数値を含め総合的に判断して合否を決めますが合格率は約30%です。また有望なインフルエンサーを見付け、こちらからお声掛けすることもあります。
余談ですが、バリーズ時代を含めてサービス開始以降の3年9カ月の1000泊以上の実績のなかで、会員がドタキャンで宿泊施設に迷惑をかけた例は1つもありません。厳正な会員審査が機能している結果だと自負していますしインフルエンサー側にも会員資格を失いたくないという心理が働くのだと思います。
齋藤 社会的なジェンダーレスの流れを受けて、入会者の登録内容にはあえて性別やセクシャルアイデンティの項目はなく、そのため正確には把握できていません。しかし、たとえば「LGBTフレンドリーなホテルの魅力をプロモーションするため」を目的に挙げてインフルエンサーを募集することはもちろん可能です。
齋藤 SNS活用の遅れは日本の観光産業の弱点です。そこに対してプロモーションのDXを提供するのがSOCIALPORTです。時代に合ったプロモーション手法を提供し、宿泊施設それぞれの魅力を消費者に伝える架け橋になるのが企業としての目標です。
トラベルインフルエンサーは一般の旅行者に近い目線で商品やサービスを客観視し、旅行者の言葉で発信するから共感を得られます。消費者の宿泊施設選びはコロナ禍以降、より安心・安全を重視する傾向ですが、宿泊施設がホームページで安全性を訴えても利用者には届きません。実際に宿泊したインフルエンサーが「安心で快適に楽しめた」と自分の言葉で投稿すれば信憑性は格段に高まります。
齋藤 招待なのか単に個人で宿泊したのかの違いは、ハッシュタグを見れば分かりますが、招待でも信頼性は損なわれません。SOCIALPORT会員はトラベルインフルエンサーのみ。企業から広告費を得て各種商品を宣伝する職業インフルエンサーと違い、会員インフルエンサーはもともと旅行が趣味で旅の思い出をSNS発信しているうちに、いつの間にかファンが付きフォロワー数が増えたという方が中心です。インフルエンサーの旅のスタイルが好きでフォローしているファンにとって招待宿泊するという事実は、憧れて自分もそうなりたいという願望を刺激しポジティブな受け止め方はされても、否定的には捉えられないのが特徴です。
また、SOCIALPORTのトラベルインフルエンサーは無報酬。宿泊は招待で無料ですが金銭報酬は宿泊施設からも我々からも提供されません。北海道から沖縄の離島などの遠方を含めて交通費は自腹です。
齋藤 システム利用料です。料金は1回・1プロパティ当たり8万円と非常に安価です。1回当たりの招待の人数制限はないので、新規開業時に30名を招待した宿泊施設もあります。
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