「空の旅」で都道府県間の相互誘客を活性化させる3事例を紹介-「空の旅」を考えるサミット [PR]
平和ツーリズムや地域の知られざる歴史をテーマに
課題解決で第2のふるさとづくりも促進
ひょうご観光本部とみなと銀行が共催した「『空の旅』を考えるサミット」では、活動事例として、兵庫県加西市、兵庫県宝塚市、ANAグループとひょうご観光本部の取り組みが発表された。ひょうご観光本部ツーリズムプロデューサーの江藤誠晃氏がモデレーターを務め、それぞれ担当者が活動内容や今後の展望を紹介。神戸空港を拠点として就航地とリンクする新しい交流のカタチについて議論を進めた。
加西市、旧海軍ゆかりの地で4市と連携
加西市での取り組みについては、加西市文化・観光・スポーツ課課長の高見昭紀氏が、2018年7月に設立された「空がつなぐまち・ひとづくり推進協議会」の活動を紹介した。この協議会では、旧海軍ゆかりの地がある姫路市、加西市、大分県宇佐市、鹿児島県鹿屋市が連携。高見氏は「平和の空でつながる4市の物語で町と人をつなげている」と説明した。
太平洋戦争末期、加西市にあった姫路海軍航空隊と宇佐市にあった宇佐海軍航空隊では、特別攻撃隊が編成され、若い隊員たちが鹿屋市の基地から沖縄方面に出撃していたという歴史的背景がある。加西市には、昭和18年に建設された姫路海軍航空隊の鶉野飛行場跡が現存し、爆弾庫、防空壕、対空機銃棚などが残ることから、4市との連携で、戦跡フィールドワークを通じた平和ツーリズムを訴求している。
今年4月中旬には、地域活性化施設「soraかさい」がオープンし、特攻に使われた97式艦上攻撃の実物大模型も展示される予定だ。高見氏は「これまでは加西市は観光で取り上げられることはなかったが、2020年ごろから関西圏の小中学校の修学旅行や校外学習で平和学習の受け入れが増え始めた」とプロモーションの効果に手応えを示した。
一方で、今後の展開に向けてた課題としてガイドの育成を挙げた。加西市では現在、歴史街道ポランティアガイド16名が観光案内を行っているが、「高齢化が進んでおり、新たなガイド育成が急務になっている」という。そこで、加西市では、姫路海軍航空隊の飛行場跡がある鶉野に特化したガイド育成講座を開設。高見氏は「募集をかけると、意外と若い世代や主婦層からの申し込みがあった」と明かし、今後への期待感を表した。
ひょうご観光本部では、兵庫と就航地である青森、茨城、松本、鹿児島を繋ぐ観光プロジェクト「2 Way Air Travel Project あの町、この町、空の旅」を展開しており、その一つの取り組みとして、それぞれの町で観光アンバサダーの登録を進めており、現在のところ兵庫2368人、長野360人、青森567人、茨城501人、鹿児島357人の計4153人が登録しているという。
江藤氏は、加西市の取り組みを例に、「まずは県内を繋ぎ、これを全国に広げて、国内を繋いでいく」考えを示したうえで、「soraかさい」はハワイの戦艦ミズーリー記念館と同様な施設になりうるとして、将来的には海外ともつながる平和ツーリズムに期待を示した。
また、ひょうご観光本部は、ヒトタビHYOGO事業でバイリンガルのガイド養成を実施していることから、加西市のボランティアガイドと協力し合うことで、戦跡がインバウンド向けの観光資源になる可能性にも触れ、「(4市に加えて)、広島や長崎も含めた平和ツーリズムのルート作りもDMOとして取り組んでいきたい」と意欲を示した。
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