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全日本ホテル旅館協同組合理事長 金沢孝晃氏

  • 2022年1月4日

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 二年にも及ぶ新型コロナウイルス感染症拡大により、世界中が大変な事になっており、未だに終息の兆しを見せません。そんな中、昨年12月17日に発表された国内感染者数は183人、死亡者数に至っては0人であり、国内ではようやく終息の気配が感じられ始めました。

 しかしながらアメリカやイギリスで新たな変異株である「オミクロン株」による感染が爆発的な拡大を見せている中、東京でも3人の感染者が確認され、その中の一人がサッカー天皇杯観戦に行っており、周囲にいた80人に検査を受けるよう連絡を取っているとの事です。岸田総理が海外でオミクロン拡大の情報を受け、いち早く国外からの入国を禁止した事は英断であり、徹底した入国制限の管理をすべきであります。

 我々、ホテル旅館業界は、この2年間で深刻な打撃を受け、売上減少で全く資金が回らず、大変な経営環境となり経営基盤が崩壊している状態であります。政府からの援助の中で、評価できるものは令和3年度分の建物の固定資産税減免があっただけで、それすらも風俗営業店を1か所でも営業していれば、其の会社が同じように営業している一般旅館、一般ホテルを何軒、何十軒持っていても、減免が一切受けられないと言う歪なものでした。

 風俗営業店も各行政から営業許可を受け、法の下で営業しており、更に申し上げるならば、一般のホテル旅館に比べ、更に厳しく順法管理を行い、営業を行っている事を鑑みれば、明らかな職業差別であり、法の下の平等を謳った憲法14条にも抵触する恐れすらあります。この問題を何人かの代議士と一緒に是正しようとしましたが、この事に大反対したのが昨年11月の国政選挙で落選した、石原伸晃元自民党幹事長だと聞いております。その後に色々と問題が噴出したのは、皆様のご存じの通りであります。

 旅行業、宿泊業、飲食業とその関連業界を支援するGOTOキャンペーン(35%割引)が一昨年の7月~12月28日の期間、クーポン配布(15%割引)が同じく10月1日~12月28日までと、ごく短期間のみの施策で終わりました。直前迄、殆ど休業状態からのGOTOキャンペーン開始となり、人集めに大変な苦労をし、やっと従業員が定着し、運営が安定しそうになった矢先に、緊急事態宣言等で12月に入るとキャンセル続出で、正月三が日以降は一気に閑散となりました。GOTOキャンペーンで儲かったとはっきり言える業者は、実際には皆無ではなかったのではないかとさえ思う次第で御座います。

 前回行われたGOTOキャンペーンを分析すると、開始時は急に忙しくなり、客足も伸びましたが、終わればお客さんが全くいなくなるのは目に見えており、緊急事態宣言等が無かったとしても、やはり上手く行かなかったのではないかという印象が拭えません。もしやるのであれば、期間は最低でも1年以上とし、その間、段階的に補助率を引き下げて行き、軟着陸出来るような方法でなければ余りに宿泊業者への負担は大きいと感じます。私個人としては、GOTOキャンペーンは行わず、根本的な問題である新型コロナウイルス感染拡大を、政府主導で徹底的に抑えてくれさえすれば、お客さんは自然な流れで来てもらえると考えております。

 また、宿泊業者に対しては、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で出した赤字分に関して、全面補填出来る金額を、公的資金による長期かつ低利融資を実施する事が本当の意味での支援につながると考えます。この支援策は返済を前提とする融資であり、単なるバラマキ政策とは違い、国民から何の批判も受ける事はありません。

 現在、政策金融公庫と商工中金をメインとして新型コロナウイルス対策緊急融資の窓口が存在しておりますが、金額が大きくなると審査が厳しく、日数もかかり、本当に苦しい所には融資不可となる事が多く、特に商工中金に至っては内容が悪い所には貸さないという姿勢が顕著に見受けられました。これでは何のための緊急融資なのかと疑問に思わざるを得ず、本来の意義も意味も全く体を成していない現状を鑑み、このような事態が続く様であれば、政府は鼎の軽重を問われる事になると危惧しており、民間金融機関も含めてしっかり指導してもらいたいというのが私の意見です。

 本年こそは、世界中から新型コロナウイルス感染症の終息宣言が出される事を祈念すると共に、本年が更なるいい年となるように皆さんと一緒に頑張って行きたいと思います。