韓国の「今」を駐在員の視点から-足踏み状態の感染状況、観光業界各所の現況

現地旅行会社状況

 韓国政府、自治体により2020年7月から政府の雇用経営持続低金利融資、2020年11月から3次にわたる危機業種向け少額救済支援が実施されました。旅行会社など観光産業の多くの企業は、未だ具体的な国境再開の見通しがたたない状況から、雇用経営持続低金利融資の再申請を行うことを躊躇し、従業員の解雇、休業、廃業を選択する企業が増加しています。

現地サプライヤー状況

ロッテ免税店
 昨年は販売スタッフの雇用調整は見られたものの、今年に入って親族訪問渡航や、韓国人向け「無着陸無観光・空の旅」の乗客を対象とした最大40%OFFセール等、積極的に販売活動を行っています。デパート部門では、海外旅行にいけない人たちのブランド品等の高額品に対する国内ショッピング意欲の高まりにより、店内の賑わいが戻りつつあるとの報道を見かけています。

明洞の土産屋
 日本人旅行者の多くがショッピングで訪れる明洞(ミョンドン)エリア、化粧品や衣服・韓国のり・高麗人参などで有名ですが、コロナ発生後は外国人旅行客消滅や国内の若年層が驚くほど減少し、衣服で国内最大規模を誇る店舗を持つU社は店舗を撤退しました。エリア全体では、メインストリートの店舗の32%、非メインストリートの店舗の50%、明洞全体では45%の店舗が休廃業し、特にかなりを占めていた化粧品店舗の休廃業が目に付きます。過去25年間日本人旅行者がよく訪れた韓国産食品土産店A社は、昨年7月の店舗賃貸契約更新時に更新は行わず、スタッフは無給休暇とし、現在は無店舗で海外リピーター客への越境販売のみを行っています。

日本語ソウルオプショナルツアーを催行するB社
 B社は2020年3月末に全ツアーの催行を中止、以降ツアーの催行を行っていません。コロナ規制の長期化が予想されだした5月に、ドライバー、ガイドの整理解雇を実施、ツアーで使用するマイクロバス、バン、計6台所有していましたが車両の売却を行い休業状態となっています。

観光バス会社C社
 観光バス会社も旅行会社と同じく経営危機業種に指定され、政府雇用経営持続低金利融資を申請することができます。このC社も3回にわたって低金利融資は受けていますが、予想を上回る事態の長期化により、現在はドライバーの解雇、無給休暇を行って実質的な休業状態となっています。人員整理されたドライバーは、ネット購入の大幅な増加により人手不足になった宅配や配送配達などの貨物運送業界で一時的に働き、旅行業界の回復を待って観光バス業界に戻ることを待つ人が多いようです。

日本語ツアーガイド
 翻訳業務(日本語⇔韓国語)で働く人、介護訓練教育で資格取得に励む人、年齢的タイミングでリタイアした人、ネット販売の配送仕分けで働く人など、様々な道へ進んでいます。日本人旅行者の受入れが再開された時には、ツアーガイドとして戻ることを希望する人もいれば、新しい道へ進むことを決意し、もうツアーガイドには戻らないという人も少なくなく、需要が戻った時にガイド不足になる事態が懸念されるようになってきました。

金載鎬(キム・ジェホ)さん

韓国最大の靴卸・小売専門市場
東大門靴市場(トンデムン・シンバルシジャン)

 120店舗を賃貸管理する総責任者、金載鎬(キム・ジェホ)さんに話を伺いました。当靴市場は、1980年から現在まで41年間運営しております。夜間の22時~早朝7時頃までが営業となりますが、主な顧客は靴の販売店主の他、小売の一般客が訪れます。

 1998年に起こったIMF国家経済危機を乗り越え現在に至りますが、今回の新型コロナの影響はIMF国家経済危機よりも厳しい状況だと話します。各賃借店舗は販売スタッフの人員整理を行いましたが、お店はすべて休業することなく営業を続け、政府の小商工人支援金(少額3回)と低金利商工人申請審査融資を受け凌いでいます。今年に入り、長いコロナ禍の生活で抑止してきた国内消費は多少回復し、各店舗の在庫が減少しているところです。是非以前に戻ることを強く期待しています。

東大門靴市場内部の様子
早朝の営業終了直前の様子。ほぼ市場にはお客の姿はありません。



写真で見る、現地の様子

ソウルメトロ2号線 蚕室ナル駅
週末の土曜午前の様子

ソウルメトロ2号線 車中
週末午後の様子。人出はかなり以前の水準に戻ってきました。

ソウル中区の庶民食堂
昼過ぎですが、出前注文は60%、来客は以前の50%ほどに回復してきました。座席間の距離を保ち営業してますとのこと。

 誰もが予想できなかった長い闘いが続いていますが、世界の感染状況が好転し、「あの日の日常」を取り戻すことと、日本人をはじめとする多くの旅行者を韓国にお迎えできるようになることを切に願います。

本稿は、トランスオービット韓国社長の金清氏より寄稿いただいています。
※2021年5月20日(現地時間)現在の情報です。

株式会社トランスオービット
米国本土・ハワイ・カナダ・オーストラリア・韓国に現地法人を有するランドオペレーター
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