ハワイ州観光局、さらに前進するレスポンシブル・ツーリズム特設サイト「マラマ・ハワイ」を開設
ハワイ州観光局(HTJ)は、主要活動理念の一つに掲げるレスポンシブル・ツーリズムを積極的に推進している。4月22日にはレスポンシブル・ツーリズムの特設サイト「マラマ・ハワイMālama Hawai’i」を開設。その前日には「SDGsとハワイ州」をテーマに第2回ハワイ・ツーリズム・フォーラムをオンライン開催しており、レスポンシブル・ツーリズムの取り組みを加速している。セミナーでHTJ日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏は「特設サイトの立ち上げを機に、新キャンペーン『マラマ・ハワイ~地球にやさしい旅を~』をリリースする」と発表した。
「マラマ・ハワイ」はHTJのポータルサイト「オールハワイ」内のマイクロサイトで、地球環境を考える日としてユネスコが提唱するアースデイ(4月22日)に合わせて開設した。マラマはハワイ語で「いたわる」や「思いやり」を意味し、環境や地元住民に優しい観光を目指すレスポンシブル・ツーリズムの基本精神を象徴している。サイトではハワイで自然環境保護やハワイ文化継承を行っているHTJや観光関連企業、NPO、地域コミュニティーなどの活動情報や、旅行者が参画できる活動や体験プログラムについても発信している。
HTJによれば、ハワイにおけるレスポンシブル・ツーリズムの歴史は長く、レスポンシブル・ツーリズムという言葉が生まれる40年以上前の1976年にはすでに「マラマ・ハワイ」というスローガンを掲げて「ハワイを思いやる心」を大切にしようという取り組みが始まっている。2011年にはホノルルで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)サミットにおいて2030年までに持続可能な社会目標を達成することを目指すプロジェクト「ハワイグリーングロース」構想が誕生した。2014年にはハワイ州が持続可能な社会の実現のために推進する6つの社会目標「アロハプラスチャレンジ」を定め、2017年には全米で初めてパリ協定の達成を目指す法律を制定。さらに18年にはハワイグリーングロース構想が国連SDGs「Local2020」のプロジェクトハブに認証された。
このように世界的にもSDGsやレスポンシブル・ツーリズム活動の先端を行くアロハプラスチャレンジは、教育旅行の素材としても有望で、「ハワイで実施しているさまざまな交流事業や教育事業に参画できる仕組みがあり、HTJは日本からの参画を支援していく」(ヴァーレイ氏)としている。
実際に例えば若い世代がエネルギー問題を考える場として毎年ハワイで実施されている「スチューデント・エナジー・サミット」には昨年、日本の高校生が参加したほか、ハワイ島で実施している海洋ごみの仕分け作業にも一昨年に日本の高校生が参加している。また地産地消と自給自足の参考となる伝統的な養魚池のシステムを学ぶ取り組みもハワイで提供されており、次世代教育に役立てられている。ヴァーレイ氏は「ハワイのさまざまな団体や企業がSDGs関連の教育関連活動に携わっており、各島によって異なる多彩な環境教育プログラムを提供していける」とし、教育旅行デスティネーションとしてのハワイ各島の可能性をアピールしている。
また地球環境保全活動の一環として、ハワイを拠点に古代から伝わる伝統航海術の再現に取り組むポリネシア航海協会が新たな航海を計画。これは「マラマ・ホヌア(地球への思いやり)」のメッセージを掲げて伝統航海カヌー「ホクレア」によって実施した3年間(2015~17年)の世界航海に続くプロジェクト。2022年から26年にかけて太平洋航海を行う予定で「寄港地には日本も含まれており、日本との交流や姉妹都市交流の機会が期待できる」(ヴァーレイ氏)という。
今回のハワイ・ツーリズム・フォーラムでは、やまとごころの村山慶輔代表取締役が基調講演し、コロナ禍を経て世界のツーリズムはよりサステナブルを重視する方向に変化しており、旅行会社もデスティネーションもSDGs対応が重要性を増すと説明。さらに「サステナブルツーリズムはもう古いとの見方もあり、さらに先を行くリジェネラティブトラベル、つまり進化する観光として旅行客が来るほど地域が良くなるという発想が求められている。より視線を上げた取り組みが必要だ」と指摘した。
またパネルディスカッションでは、HTJの寺本竜太日本支局営業部長がモデレーターを務め、やまとごころの村山氏の他、資生堂のSHISEIDOグローバルブランドユニット・エクステンションプラットフォーム・カテゴリー室長を務める大山志保里氏、デルタ航空日本地区社長の大隅ヴィクター氏、Hanako編集長の田島朗氏がパネラーとして登壇。それぞれの企業と立場におけるSDGsの取り組みを紹介した。
なお第3回ハワイ・ツーリズム・フォーラムは、5月19日に「教育旅行」をテーマに開催する予定。