21年入社式:JTB代表取締役 社長執行役員 山北栄二郎氏
本日は誠におめでとうございます。数ある企業の中から、JTBグループを選んで頂いたことを感謝するとともに、心から皆さんを歓迎致します。
JTBはグローバルな会社です。アジア、ヨーロッパ、アメリカそして世界39か国の各地で、様々な国籍や経験をもった仲間たちが、心をひとつにし、人々の感動に寄り添いながら働いています。これまでの学生時代の経験を経て、多様なバックグラウンド、価値観を持った皆さんをお迎えし、さらにダイバーシティに富んだ会社に発展させていけることを、改めて嬉しく思います。
~中略~
大河ドラマでも話題で、一万円札のモデルになる予定の渋沢栄一ですが、今から130年以上前の1887年にパリを訪れています。そこで、彼は、多くの外国人旅行者が街にあふれ、異なる文化が交わることで街に賑わいが生まれ、経済が発展していく様子を目の当たりにしました。将来の日本の発展のために、観光産業の育成と外国人観光客の誘致が重要であるという考えに至り、1893年に「貴賓会」を発足しました。これが今のJTBの源流であります。1912年にこの「貴賓会」を発展させ、JTB、当時の名称でジャパン・ツーリスト・ビューローが創立されました。以来我が社は、109年の年月の中で観光産業と社会の発展のために全身全霊を注いできました。そういう歴史を踏まえ、JTBは「地球を舞台に人々の交流を創造し、平和で心豊かな社会の実現に貢献する」ことを経営理念に掲げています。そんな会社で、今後皆さんは活躍されることになります。
改めて今日の日が、皆さんにとって、素晴らしい社会人生活のスタートとなることを願っています。
~中略~
さて、昨年は、新型コロナウイルスの流行により、各方面で様々な影響がでました。JTBグループ、そしてツーリズム産業においても、これまでに経験のない激動の1年となりました。 そのような中、JTBグループの新たな「希望」として皆さんをお迎えし、この2021年度が始まります。創立109年目を迎える今年は、これからお話しする「『新』交流創造ビジョン」に全グループで取組みます。未来の新しい交流時代を、我々全員で力を合わせ、One JTBとして共に切り拓いていきましょう。
「『新』交流創造ビジョン」についてお話する前に、今私が感じている、社会全体で起きている変化について触れておきます。
新型コロナウイルスによる影響は、マイナスな面が多く取り上げられていますが、私自身は、経済そして人々の豊かな生活の実現には、「交流」や「旅」が必要不可欠であるということを、改めて認識させられる機会となりました。 ここでは、アフターコロナといわれるこれからの新しい世界において、想定される3つの変化についてお話しします。
一つ目は、人々の価値観やライフスタイルの変化です。「ニューノーマル」という言葉が定着し、人との接触機会を減らすことや、ソーシャルディスタンスを保つことが当たり前の世の中になりました。ツーリズムや交流の在り方も大きく変化していくことが想定されます。
二つ目は、デジタル化の加速です。感染防止を目的に、非接触や分散の為、デジタルを活用した動きが一気に進みました。JTBグループでも、テレワークの促進やオンラインでのプログラム開発を行っています。デジタルを前提とする社会で、様々なデータが蓄積され、カスタマージャーニーにおけるお客様体験をひたすら改善し、エンゲージメントを高めていくことで、新しい価値の実現に繋げていく。そういう世界に社会全体が大きくシフトしています。
三つ目は、社会・経済における「持続可能性」に対する注目度の高まりです。SDGsという言葉、皆さんも耳にしたことがあるかと思います。Sustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発の為に、国連が定める17の世界目標のことです。我々JTBグループは、旅行業界のリーディングカンパニーとして、この社会的責任を果たすことを経営方針に掲げています。
このような社会変容を受け、昨年7月、新たなJTBグループの経営ビジョンを「地球を舞台に『新』交流時代を切り拓く」と定めました。「『新』交流時代」とは、アフターコロナの世界観や価値観の中で、人々が、地球を舞台に強く、相互に、多様に繋がり合い、ローカルとグローバル、リアルとデジタルな交流が相乗効果を生み出していく時代のことを意味します。この経営ビジョンを達成するために大切なことは、お客様の「実感価値」を徹底的に追求することです。お客様にとっての価値を我々が勝手に決めるのではなく、お客様が本当に実感頂ける価値を、我々がいかに見つけ出し、それに合ったサービスを提供できるのか、という考え方が基本となります。皆さんも旅行に行く際は、オンライン予約を利用されることと思います。しかし、旅行は予約するという一つの手続きだけではなく、旅マエで、メディア・雑誌などから様々な情報を得、旅ナカで、現地の観光やアクティビティ・交流を楽しみ、旅アトで、友人や家族との思い出を振り返る、といった体験を積み重ねることになります。そうした、旅そのものだけでなく日常の中での様々な情報、接点を通してお客様はJTBに対する体験を積み重ねていかれます。ですから、お客様のカスタマージャーニーに寄り添い、耳を傾け、何を求めていらっしゃるのか、ということをしっかりと理解すること。ここに全ての基本があるということを再確認し、お客様が本当に実感していただける価値の追求に取り組みます。
~中略~
JTBグループでは「自律創造型社員」を目指すべき社員像とし、一人ひとりが専門性を磨き成長することによって、社の成長、グループの発展を支えるという考え方を軸にしております。我々が世の中に先駆け、「新」交流時代を切り拓いていくにあたって、デジタル基盤を活かしながら、「人」でなくてはできない、高度なサービスを提供し続ける必要があります。これからのJTBグループが皆さんに求める能力やマインドは、次の3つだと考えます。
一つ目、お客様の実感価値向上のために、自ら問いを立て、改善に取組み続けること
二つ目、自らの意志と努力で、必要とされるスキル・知識を自律的に高め続けること
三つ目、One JTBにおいて自身が果たすべきミッションを成し遂げること
新たなJTBグループを創りあげていくのは、社員ひとり一人であり、まさに皆さんの力が必要となります。
昔、中国で多くの名言を残した孔子という偉人がいますが、その名言の中で私が大切にしている言葉を紹介します。「学びて思わざれば則ち罔(くら)し、思いて学ばざれば即ち殆(あやう)し」。人から学ぶばかりで、自分で考えようとしなければ、物事の本質を見抜く力が身につかない。反対に、自分で考えるばかりで、人から教えてもらおうとしなければ、思考の幅が狭くなり考えが凝り固まってしまう。という意味です。その根底には人間は常に「謙虚」でないといけない。常に学び、考え、行動していくこと。このことを忘れずにいてほしいと思います。
私自身も自分の考えを持ちながら、同期や先輩・後輩、お客様、たくさんの方から学び、成長できたと実感しています。皆さん一人ひとりが自身の成長や将来について真剣に考え、様々なことに挑戦し続けてほしい。時には険しい道のりを進んでいくこともあるかと思いますが、その先に広がる未来に向かって共に考え、新たなJTBグループを創っていきましょう。
~中略~
我々の仕事は、常に「感動」に寄り添い、お客様に喜んで頂くことが全ての原点です。是非、自分の仕事に誇りを持ってください。そして、お客様の喜び・感動を自分自身のこととして共有できる社員になってください。
皆さんは、JTBグループの「希望」です。長いトンネルの先には、必ず輝かしい光が待っています。あらゆることにチャレンジし、大きく成長することで、社の未来を灯す「光」となって欲しいと強く願っています。
人々の交流は必ず回復します。ともに、新しい交流時代を切り拓いていきましょう!