目的に沿ったデジタル化で業績アップへ-JATA経営フォーラム

  • 2021年4月1日

デジタル化はあくまでも「手段」
自社の進むべき方向に適した対策を

バックヤードをデジタル化、営業の「見える化」で利益率が向上

ビーエス観光代表取締役の水野剛氏

 続いて、仏教寺院の団体参拝旅行を専門に取り扱うビーエス観光代表取締役の水野剛氏が、自社のバックヤード部門のデジタル化について説明した。ビーエス観光は東京・大阪・愛知・京都・広島・鳥取に営業所を持つ会社で、社員数は45名。営業が各寺を回り、国内の参拝旅行やインド仏教遺跡巡礼旅行などの受注型企画旅行を扱っている。

 同社では7年前にクラウドの業務支援システムを導入してバックヤード部門をデジタル化し、業務の効率化と利益率の向上、社員の給料アップに成功している。水野氏は「会社は人でもっているので、デジタル化がすべての答えではない」としながらも、「バックヤード業務を効率化して仕事の無駄を省けば、余った力を新規顧客の開拓、顧客満足度の向上に注力できる」とデジタル化のメリットを強調した。

 ビーエス観光ではデジタル化により、各営業所の経理業務を東京本社に一元化。顧客の情報をカルテ化して全社で共有し、営業の「見える化」もはかった。それにより、営業所間のコミュニケーションが活発化し、情報交換することで新規顧客の開拓につながったほか、仕入れ料金が透明化したことで原価の見直しにもつながったという。水野氏は「同僚のカルテを見れるので競争意識もあがり、利益率もあがった」と喜びを示した。

 さらに、テレワークの推進にも取り組んだ。水野氏は「オフィスは情報交換などで大切だが、将来的にはオフィスはいらなくなるかもしれない。我々はもともと成果主義なので、『在宅エージェント』は十分可能」とコメント。「旅行会社はそういう形に向かっていけるのでは」と話した。

デジタル化に莫大な予算はいらず、会社にあった対応を

モデレーターを務めた沖縄ツーリスト代表取締役会長の東良和氏

 このほか、分科会ではパネルディスカッションを実施した。宮崎氏は旅行業のデジタル化が他業界に比べて遅れていることをあらためて指摘した。同氏は「待ったなしでやらなきゃいけないことは皆さまの認識の中にあるだろう。それをいかに自分の業務にとり入れていくかが大切」と話し、パネリストを含む他社の事例を参考にした「いいとこどり」を推奨。「何のためにデジタル化するのか、自身の商売や会社をどう進めるために何が必要かを選んでほしい」と話した。

 加堂氏は「デジタル技術を使えばお客様により満足度の高いサービスが提供できる時代になったからこそ、デジタル化やDXが必要」との考えを示した。加えて「我々はそれなりの規模で人材投資しているが、必ずしも大きな予算がなければ内製化、ITデジタル化ができないわけではない」と話し、デジタル化は予算に限らず可能であるとした。そのうえで「1人2人でも、企業のビジョンや目的に共感してくれるエンジニアがいればそこがコアになり、DXの基盤づくりが進められる」と話した。

 水野氏は「デジタル化できるところは置き換えるが、ヒューマンタッチも旅行業界は絶対必要」と語り、顧客には人的サービスを提供し、バックヤードはデジタル化するなどのすみ分けが重要であるとの考えを示した。さらに、「自分たちの会社にあった方法でデジタル化を進めていけばいい」と語り、各社の特性を活かしてデジタル化を進めていくよう訴えた。