「銀行はこう使え!」-メガバンク元営業担当が本気のアドバイス vol.5
銀行審査の裏側
融資の可否を分ける5大要素とは
銀行とどう付き合うか―。これは、観光産業だけでなく多くの企業経営者が頭を悩ます課題ではないでしょうか。某メガバンクで新卒から6年法人営業に従事して現在は旅行業界に携わる筆者が、年商1億に満たない会社から東証一部上場の企業まで延べ100社以上を担当してきた経験を元に、皆様の「知りたい」にお答えしてきた本企画。当初は5回で終了の予定でしたが、お蔭様でご好評をいただいており、延長が決定しました。これからも皆様の業務のお役に立つ情報を発信していきたいと思いますので、今しばらくお付き合いください。(過去記事はこちら 第1回/第2回/第3回/第4回)
融資検討の5大要素
皆さんはご自身がお金を貸すことになった時どのようなことを考えますか?「本当に返してくれる人か?」「月々の収入はどのくらいあるだろう?」「何に使うつもりなのか?」等々、色々なことが気になると思います。銀行の融資審査はまさにこのようなことを論理的に考える作業です。ここで融資検討の5大要素をご紹介します。
(1)資金使途:何に使うか?
(2)返済原資:何を原資に返済するか?
(3)返済能力:事業やプロジェクト、会社全体の収益能力がどの程度か?
(4)保全:リスク保全がどの程度はかれているか?(≒担保、保証)
(5)採算:融資のリターンはどのくらいあるか?(≒金利)
資金使途とは、借りたお金を何に使うかです。「運転資金」や「設備資金」などがその代表ですが、これら資金使途に応じて返済原資や借入期間も変わってきます。運転資金であれば1ヶ月の短期から5年間程度が基準となりますし、設備投資であれば減価償却期間の範囲内が一般的です。
返済原資では、借りたお金に対し何を原資に返済するかを検証します。運転資金であれば商品等の販売により得た資金となりますし、設備投資であればその設備から生み出された利益です。
返済能力では、融資対象となる事業やその会社の収益力を検証します。取り扱う商品は競争力があるか、販売先が集中していないか、業界内のポジションはどうか、中長期的に利益を上げているかなどを総合的に分析します。
保全は不動産担保や代表者の連帯保証などが一般的ですが、融資が焦げ付いた際のリスク保全がどの程度はかれているかを見ます。
最後の採算は、その融資から得られる金利収入に加え、今後の取引展望を踏まえて判断します。
まざまな融資案件がありますが、基本的にはこの5つが審査の肝で、すべて備わっていればスムーズに案件が通りますし、何かネックがある場合はそれを補うように条件を整えていきます。大前提として銀行の資金は預金者の方たちのお金ですから、貸した金が返ってこないことなどあってはなりません。これら要素を分析する基となっているのが決算書や試算表であり、定性面も踏まえリスクとリターンを分析することが銀行員には求められているのです。