【現地レポート】観光大国タイのコロナ禍の生活

5段階の規制
外国人旅行者の現状

在宅ワークで若干渋滞が減ったバンコク中心部

 世界各国から旅行者が訪れるタイ王国。GDPの約12%が観光業という、これまで観光業に依存してきたこの国のコロナ禍の現状を、現地日系企業に勤める筆者が4回にわたってお伝えします。私自身もこの国を観光で訪れて好きになり、在住歴はもうすぐ3年になろうとしています。読者の方々に少しでも有益な情報をお伝えし、現地の雰囲気を記事で感じ取って頂ければ幸いです。

タイと日本のコロナの影響の違い

 日本では訪日客の受け入れを規制し、国内においても人の移動を自粛するよう政府がこれまで働きかけてきました。これにより地方の観光業や飲食業などでは大きな影響が出ています。タイでも同じ対策が取られていますが、中進国という立場から日本とは違った影響が出ています。

 タイでは海外からの外国人の受け入れを規制し、観光業は大打撃を受けているだけでなく、それ以外にも先進国輸出向けの製造業は工場の稼働が停止、隣国からの不法労働者がなだれ込みクラスターが発生、バンコクで王室改革のデモ、低所得者の生活が立ち行かなくなるなど、日本よりも深刻で複雑化しています。

第2波が来た時の県境の検問

現在の政府の政策

 タイ政府は昨年から緊急事態宣言を発令しており、地域により規制内容を5段階に区分してしています。最高度厳格管理地域のレッド区域では飲食店や商業施設の営業は午後9時まで、飲食店での酒類提供は禁止、娯楽施設やバーなどは営業禁止、教育機関は閉鎖されており、オンライン授業のみが許可されています。次に厳しいオレンジ区域では、午後11時まで飲食店やバーなどの店内飲食や酒類提供が認められています。イエロー地域では午前0時まで、と徐々に規制が緩くなります。2月22日付けの政府の発表で首都バンコクは最高度厳格管理地域のレッド区域から2番目のオレンジ区域に引き下げられました。これにより2月23日より約2ヵ月ぶりに飲食店での酒類の提供、娯楽施設、バー、パブなどの営業再開が認められました。

バンコクの歓楽街

外国人旅行者の状況

 タイでは昨年3月より国外からの外国人の受け入れを厳格に規制しています。元々タイには世界中からの長期旅行者が多く滞在しており、第一波の際には欧米の状況が酷いこともあり、タイに留まる欧米人をよく見かけました。政府も観光ビザで入国し、帰国出来ない旅行者に特別措置としてビザの期限が切れていても滞在を認めていましたが、昨年秋に特別な事情で自国大使館からのレターをもらわない限り、これ以上の滞在を認めないとする発表をしました。しかし、南部の島々にはまだ多くの欧米からの旅行者が残っています。彼らにはフライト以外に何か帰れない事情があるのでしょう。

現地日本人サラリーマンのプライベート事情

 タイでも日本人のビジネスでの付き合いは平日の夜は居酒屋、カラオケ、週末はゴルフというのがお決まりです。このコロナの影響でクライアントとの接待はかなり減ったと私の周辺ではよく聞きます。行っても居酒屋だけで、そのあとのカラオケには会社から行くことを禁止されている人もいます。外国人旅行者ではなく、長期滞在者向けのバンコクのカラオケ、バーの経営も非常に厳しい状態が続いています。

 一方、日本人旅行者に関しては街でほとんど見かけません。皆どこかの企業に勤めていたり、駐在妻であるように見えます。タイでビジネスをしている日本人個人事業主の方は、隔離を経て日本とタイを行き来したという話をよく聞きますが、企業に勤める方は約一年間帰国出来ていません。隔離期間がネックで会社が一時帰国を認めないケースがほとんどです。