発信力を磨いて「頼られるDMO」に、三重県観光連盟 事務局次長 川口政樹氏
2019年「都道府県公式観光情報サイト閲覧者数ランキング」全国1位、SNSの総フォロワー数、全国の都道府県観光振興団体中1位。いずれも三重県観光連盟が運営する「観光三重」の成績だ。伊勢神宮に熊野古道、海産物にブランド牛と観光資源に恵まれた三重県だが、実は観光連盟の予算は全国でも最小規模。限られた予算のなかでいかに存在感を発揮し、「頼られるDMO」となるかを模索してきたという観光連盟の事務局次長、川口政樹氏に話を聞いた。インタビューは1月26日に実施した。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
川口政樹氏(以下敬称略) 公益社団法人三重県観光連盟は平成30年にDMOの認定を受け、三重県全域を担当するDMOとして活動しています。いわゆる観光協会がDMOになったパターンであり、DMOとしての動きを日々模索しながら、既存の枠組み内で役割を果たすべく取り組んでいます。
私は三重県出身で、三重県庁の職員です。県庁の観光局に1年勤務した後で連盟に派遣され、今年で5年目になります。それ以前は福祉や土木、教育など観光とは関わりのない部署にいたため、まだまだ知らないことも沢山あるのですが、各職場で広報的な立場を担ってきた経験は今の業務に活かせているのではないかと思います。
川口 今年度の予算は8600万円で、全国的に見るとかなり少ない金額です。一般的な観光協会のような組織では予算の大半を行政からの補助金や委託料で運営していますが、私たちは5割程度で、それも特徴と言えるかもしれません。10年ほど前から県の財政も厳しく、補助金の比率は徐々に低下しています。一方、観光事業者からの会費収入はほぼ変わらないため資金不足が深刻で、その対策としてさまざまなことに取り組んできた結果、現在では広告収入が少しずつ増えてきています。
常勤の職員は7名で、専務理事は三重交通さんからの出向、2名がプロパー職員、3名が県からの派遣、1名が近畿日本ツーリストさんからの出向です。また週1回の勤務で地元銀行からも1名来てもらっています。
川口 三重県では観光振興基本計画のなかで目標数値を設定しており、連盟もそちらと連動した目標に向けて運営しています。最大のKGIは観光消費額ですが、県レベルの観光消費額では目標があまりにも大きすぎて個々の施策との相関関係が分かりづらいと考え、連盟内のKPIとして、ウェブサイトのページビュー数や広告収入など、日々の活動に対する目標を独自で設けています。
組織としての最大の課題は、やりたいことは色々とあるけれども予算が足りないという点ですね。とはいえ県の財政が厳しいことも認識していますので、今あるお金をどのように有効活用していくかにフォーカスしています。最終的なゴールは観光を振興することで地域の暮らしが豊かになること。予算が少ないなかでもゴールによりストレートに結びつくような施策を打っていかなければと考えています。
またインバウンド対応も課題のひとつです。三重県ではインバウンド誘客事業を県庁が実施しており、連盟は国内を中心とした事業展開をしてきたところですが、DMOとして国のインバウンド施策に対応することが求められています。昨年度から、観光庁の「世界水準のDMO形成促進事業」を活用することで、コンテンツ造成や流通促進、受入環境整備に取り組めるようになりました。なお、連盟のデジタルマーケティングへの知見や取り組みは県庁からも評価してもらっているので、連携を深めながら対応を進めていきたいと思っています。