日本観光振興協会 オンラインで新春観光フォーラムを開催
「新しい観光スタイルへの挑戦」
DX推進、地域・行政が一体となって新たな価値を
J.フロント リテイリング 好本達也取締役兼代表執行役社長「インバウンドの3つの偏りを是正」
日本百貨店協会の副会長も務める好本氏は、百貨店は立地や店舗により特色があり、一部は観光との間に強い結びつきがあると説明。自社の2019年度の売上構成を見ると、大丸東京店は国内旅行者や出張者の利用が多く、GINZA SIXはインバウンドが想定以上に伸び、大丸心斎橋店もインバウンドが40%を占めたという。
同年の百貨店業界でのインバウンド消費は年間約3500億円に上り、約6%のシェアを占めた。これは訪日外国人旅行消費額4.8兆円のうちの約7%(買い物代としては約20%)にあたるが、2020年はコロナ禍で需要が消失。しかし好本氏はこの状況を「立ち止まって見直す好機だと捉えている」といい、インバウンドの「3つの偏り」として、購買者の国籍の中国への偏り、商品分野の化粧品への偏り、販売地域の関東圏と近畿圏への偏りを指摘した。
偏りを正すキーワードは「ローカルを極め、グローバルに発信する」にあるとして、同質化からの脱却に向けて今年から開始した取り組みを紹介。それぞれのエリアで地元ならではのもの、成長が見込まれるものを紹介するコンテンツを充実させつつ、ECサイトとは一線を画し、「人を通して国内外のお客様と繋がる」ことを目指すという。行政や地元企業との協力も進めている。
好本氏は今後も百貨店を日本の魅力、地域の魅力を発信する場として充実させていく考えを示し、「地域観光活性化に向けて、百貨店との連携、活用を積極的に考えてもらいたい」と呼びかけた。
飯泉嘉門徳島県知事「行政がリスクを」
全国知事会会長を務める飯泉徳島県知事は、緊急事態宣言を受けリモートで登壇した。全国知事会では昨年1月30日に「新型コロナウイルス緊急対策会議」を設置、また観光は地方創生の切り札であるという考えのもと、感染を抑えた後に反転攻勢をかけるための取り組みとして、国に向けてGo Toトラベル事業の提言を行ってきたことなどを振り返った。
昨年はコロナ感染拡大防止と社会経済活動維持の両立を図るなかで、全国で特徴的な取り組みが行われてきたといい、京都府の非接触型観光案内版やアグリワーケーション、鳥取県のキャンピングオフィスの誘致、大分県のYouTubeを利用した4ヶ国語での情報発信、宮崎県の「心を癒やすオンラインツアー」などが紹介された。また徳島県では「安心安全の実装、ウィズコロナ社会の先取り」が重要だという考えに立ち、国に任せるだけではなく地方が先導するとして、2020年3月に融資連動型の給付事業を、同6月に「新生活様式」導入応援助成金を創設、給付を行ってきたと述べた。
また飯泉知事は「新しい生活様式に則り、行政がリスクを取ることが重要だ」といい、日本最大のアニメイベント「チャレンジ!マチ★アソビ」を開催し、「鬼滅の刃」の声優によるリモート・トークショーを16万人以上が視聴した例や、「ニューノーマル阿波おどりの祭典」としてリアルとリモートを融合して阿波おどりを再始動させた例を紹介。また今年7月には鉄路と道路の両方を走行できる世界初の乗り物「DMV」の営業運転を開始するといい、「走る観光資源」をアピールした。
飯泉知事は観光は地域経済活動の重要なファクターであるとし、「DXやグリーン化など新たな技術を活用するなかで、ウィズコロナからアフターコロナを俯瞰した新たな観光スタイルに全国知事会を挙げて今後も挑戦していく」と意気込みを示した。