逆境での新規就航、その勝算は-ZIPAIR Tokyo代表取締役社長 西田真吾氏
西田 正直なところ大入り袋を出せるような状況ではありません。ご存知の通り国際線の観光需要はまったくない状態ですので、ご利用いただくお客様は現地や日本に何らかの用事があって移動される方に限られています。
ですがそのなかでも、お客様からの声には力づけられています。ホノルルに高齢のご両親がいて毎月お手伝いのために訪問しているという方からは、「これまで首都圏からはフルサービスキャリアしか選択肢がなかったが、使いやすい値段で助かった」というお言葉をいただきました。観光だけでなく生活需要を満たすのもLCCの役割だと認識しているので、参入した意義を感じています。
また、ホノルル便は290の座席のうちフルフラットシートを18席、スタンダードシートを272席としているのですが、嬉しい誤算は想定以上にフルフラットが売れているという点です。当初収入の20%がフルフラット、80%がスタンダードと考えていたところ、現在は売上の過半がフルフラットで成り立っています。夜発の便であることに加えて、飛行時間もある程度長いので、ニーズは確実にあると実感しています。
西田 予約は一定数いただいていますが、サービスを開始した直後のタイミングで、帰国後の検査については当社の商品よりも安いものが出てきました。今後もホノルルの陰性証明を取るための出発前の検査は需要があると思いますが、内容の改善は必要ですね。
またもうひとつの課題として、都内で検査を受け、出発前に成田で陰性証明を受け取るという流れを作りたいと考えています。現在成田空港では検査を受けてから結果が出るまで最短2時間と言われていますが、曜日や時間帯によってはさらに長くなることもあるようで、ここが読めなければお客様にとって使いやすいサービスにはなりません。医療機関とも連携して空港でお客様をお待たせすることのない仕組みを模索しています。
西田 航空会社はどこも同じだと思いますが、装置産業であり人手を必要とする産業でもあるため非常に苦しい状況で、固定費、変動費ともに削減して対応しています。小さなところでは乗務員の飛行機への移送のバス代を削るために社用車を使ったり、オフィスの掃除を自前にしたりと、思いつく限りの見直しを行っています。
またJALグループ全体としては、今の状況を教育訓練の機会と捉えています。需要が戻った際にアップグレードした姿をお見せできるよう、教育の一部をリモートで実施するなどの取り組みを行っています。