【コラム】HIS経常損失312億円が示すもの
日本が「日常」を取り戻すのは再来年4月との予測?!

 先週金曜日、HISの2020年10月期(2019年11月~2020年10月)の連結業績として経常損失312億円、最終赤字250億円を発表しました。COVID-19による影響が本格化したのが2020年3月、要するにHISのこの決算へのインパクトは約9ヶ月間、残り3か月の通常月の利益と相殺した結果と捉えられます。

 日本の企業の決算期は3月が最も多く、観光関連企業でも3月決算の会社は相当数に上り、これらの会社はほぼ丸1年COVID-19の影響を受けた決算となるため、惨憺たる結果になることは想像に難く有りません。

 HISの連結経常損失を連結での従業員数(HISコーポレートサイトから)1万8393名で割ると約170万円になります。HISは旅行セクター以外にエネルギー事業等も行っているため、単純比較は出来ないのですが、乱暴に従業員数との相関だけで見ると、5名の会社での850万円、10名の会社で1700万円の経常損失となります。先に触れたようにHISの決算は10月の為、大半の会社は決算ベースでの比較は難しいかと思われますが、自社の業績を相対的に評価する1つの基準にはなるかと思います。

 また先週は、日本が集団免疫を獲得し日常に戻れるのは2022年(再来年!)4月との予測がイギリス医療調査会社から発表されました。この予測が当たっているか、集団免疫獲得と出国及び入国人数がどのように相関するのかは定かでは有りませんが、観光産業を取巻く環境が日を追う毎に良くなるどころか、悪くなる一方である事は否めません。実際、今月に入り半月で当社には既に15社を超える旅行会社から廃業・休業の連絡が入っており、大手中堅旅行会社や航空会社のリストラによる縮小移転や合併の話も毎日のように耳にします。

 既に10ヶ月近く海外・訪日旅行需要が蒸発しており、残念ながら未だ当面回復の見込みが立たない以上、これまでとは次元の違う覚悟に基づく、生き残り戦略に全ての会社が舵を切らざるを得ない状況なのだと思います。

 今後の日本人出国者数に関する当社独自の想定(2021年出国者数は2019年比45%等)を8月の当コラムに書かせて頂きましたが、明らかに楽観的過ぎました。「業界誌が悲観的な事を書くな」とのお叱りも受けておりますが、観光産業に特化したメディアであるからこそ、独自の見解・予測を書く責任が有ると思っていますので、来週のコラムにて当社における最新の日本人出国者数想定を発表させて頂きます。