基準は「面白いと思えるか」ータスマニア在住コーディネーター utasmania安井康二氏
オーストラリアの南海岸沖に浮かぶ離島、タスマニア。島といってもその面積は約6800平方キロメートル、北海道より一回り小さいほどの広さがあり、総面積の4割近くが国立公園や保護区に指定されている自然豊かな州だ。 この地に異色の経歴を持つ日本人がいる。utasmaniaの安井康二氏だ。東大大学院修了後、大手電機メーカー、経営コンサルタントとキャリアを積んだ後にタスマニアに移住し、現地の人々と日本との架け橋となる仕事をする同氏の目に、今の日本の観光産業はどう映るのか。業務改善を手掛ける苺農園を背景に話を伺った。インタビューは11月30日に実施した。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
安井康二氏(以下敬称略) 東京大学大学院の工学系研究科を修了した後、機械系エンジニアとして2年働き、その後外資系コンサルティング会社に入ってメルボルン勤務になりました。これが私にとっては初めてのオーストラリアです。そこで後に妻となる女性と知り合うのですが、オーストラリアに住んで2年弱経った頃、彼女が英語の先生として日本へ行くことになり、私も同時期に帰国が決まりました。
しばらくして結婚し、仕事を辞めて新婚旅行で2ヶ月ほどヨーロッパを巡りました。日本に戻ってからは知的財産のコンサルティング会社に約2年勤めましたが、妻がタスマニアに帰りたいと言い出し、それは面白そうだと二人でタスマニアへ移ることにしました。
安井 タスマニアでは3番目に大きい北西部の中心地、デボンポートという港町に住んでいます。南部にある州都ホバートからは約300kmの距離があります。
市街地から5分ほど車を走らせるとすぐに綺麗な農場が広がっているような場所です。日本でいうと北海道のような雰囲気でしょうか。ここを選んだのはビジネス上の理由ではなく、妻の生まれた地だからです(笑)住み心地は良いですよ。
住む場所にも仕事にも、こうしなければというこだわりは特にありません。飽きっぽい性格もあると思いますが、何とかなるだろうという精神で、その時に面白そうだなと思った方向に向かうようにしています。
安井 当時タスマニア北部には日本人の経営するツアー会社がなかったので、まずはホバートの老舗のツアー会社と日本人が経営するツアー会社の2社で、2年ほどガイドのアルバイトをしました。
当初は観光の仕事のみでしたが、土地柄、農業関連の会社が多く、徐々にテクニカルビジット系の依頼が入るようになってきました。南部ではコーディネートの仕事に力を入れている会社がなかったため、私はその方面に特化しようと考え、受ける仕事をシフトしていきました。