【コロナに負けず】KPG HOTEL&RESORT取締役社長兼COOの田中正男氏

機を逃さず迅速な対応で需要を取り込む
沖縄振興に向け人材育成への投資を継続

-5月から沖縄県民向けの「コロナゼロ(5670円)プラン」が好調だったとお聞きしましたが、詳細を教えてください

カフーリゾートフチャクコンド・ホテルのアネックス棟にあるスイートルーム 田中 コロナゼロプランは、沖縄の運営4ホテルのうち、カフーリゾートとグランディスタイルで、6月から9月までの宿泊を対象に実施した。カフーリゾートでは1300人が宿泊し、約800万円の売上があり大成功だった。グランディスタイルも800人が宿泊し、460万円の売上があった。ADRは低かったが、宿泊したお客様は初めての方が多く、2つのホテルをお客様に知ってもらう良い機会となった。InstagramやFacebookで情報を拡散してくれるお客様もいて、KPGのブランディング力を高めることにもつながった。

 プランの成功の要因は、政府が5月14日に沖縄を含む39県を対象に緊急事態宣言を解除したことを受け、その翌日にプランを発表したこと。緊急事態宣言中は、県民はあまり外出できず苦しい生活をしていた。宣言が解除されて「どこに行こうか」と考えるタイミングでプランが目に留まるようにした。その後、沖縄県や各市が宿泊キャンペーンを実施したが、我々が先陣を切ったことで、お客様の目についたのだと思う。料金も安いが、我々の入念な準備勝ちだ。今後も平日限定で続けていこうかと考えている。

-来年以降はどのような見通しですか

田中 19年の沖縄への来島者数は約1000万人で、このうちインバウンドが300万人だった。20年は来島者数が約300万人から400万人、うちインバウンドは数万人を見込んでいる。21年の来島者数は700万人になればよいと思っており、うちインバウンドは100万人。政府はこのままいけば、東京オリンピック・パラリンピック前の5月から6月頃に、PCR検査を前提に観光客の入国をある程度許可すると思う。東京オリンピック・パラリンピック目当てのインバウンドが増えれば、その余波を沖縄も受けると期待している。

-コロナ禍で社員の雇用の継続が苦しい宿泊施設もあると思います

田中 我々は政府の雇用調整助成金を活用し、スタッフに対し出勤日は給与の100%、休んでもらっている待機日は給与の90%を支払っている。状況によるが、来年は待機日も給与の100%を支払えるようにしたい。

 また、スタッフについては、本土を含む九州エリアのなかでもお客様が多いKPGグループの施設にヘルプ要員を10名以上送るなどして、グループ内で人員を回し、モチベーションが下がらないよう取り組んでいる。採用活動もおこなっており、新卒者15名に内定を出した。中途採用も良い人材がいれば実施している。

 他のホテルの話を聞くと、少しずつ状況は回復しているが、例えば役職者の給与を2割減らし、一般職の給与を出勤日は100%、待機日は10%から20%減らしているところもあるようだ。一部のホテルでは給与を全額払っているが、整理解雇をした。若い人の中では退職した人やホテル業界外で再就職した人もいるようだが、失職者が急に増えたという話は聞いていない。

 12月末まで延長となった雇用調整助成金は、あくまで私の希望的観測だが来年の3月までは延長されると思っているので、当面はこのままだと思う。しかし、4月の段階でお客様の戻りが遅いのであれば、現在苦戦している「負け組」ホテルの中では、一時解雇や雇用調整が起こると思う。我々も極力避けたいが、会社の生き残りのためにある程度の雇用調整や給与の減額をしなければならないかもしれない。