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海外医療通信 2020年4月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2020年4月27日

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院・渡航者医療センター

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海外医療通信 2020年4月号

・海外感染症流行情報 

(1)全世界:新型コロナウイルスの流行状況

新型コロナウイルスの流行は4月25日までに世界185の国と地域に波及しており、感染者数は280万人以上、死亡者数は20万人以上にのぼっています(米国ジョンホプキンス大学 2020-4-26)。米国での流行はピークに達していますが、一日の感染者数は2~3万人で、2000人前後の死亡者が発生しています。イタリアやスペインでは感染者数の増加が抑えられてきており、一日の発生数は5000人前後になっています。アジアでは中国の流行がほぼ収束していますが、シンガポールで4月中旬から感染者数が一日に1000人前後と増加しています。また、インド、トルコ、ロシア、ブラジルなどの新興国で4月に入り感染者数が増加しています。今後、流行はアフリカや中南米にも拡大すると予想されます。なお、日本では4月25日までに約1万2000人の感染者が発生し334人が死亡しました。

日本の外務省は海外感染症危険情報を4月24日に発出し、ロシアやUAEなど14か国をレベル3(渡航中止勧告)に引き上げました(外務省安全センターホームページ 2020-4-24)。この結果、渡航中止勧告が発出されている国はアジア、中東、ヨーロッパ、北米、中南米などの87か国にのぼっています。

(2)全世界:新型コロナ流行で他の感染症も増加

新型コロナウイルスの流行にともなう各国の保健体制の破綻により、他の感染症の増加もおきています。メキシコでは今年4月までに1300人以上の麻疹患者(疑いを含む)が発生しており、新型コロナ流行で麻疹ワクチン接種が滞っていることが原因とみられています(WHO Outbreak news 2020-4-24)。フィリピンでも新型コロナの対応により、今年は200万人の小児が麻疹ワクチンの接種が受けられないと予測されています(UNICEF Press release 2020-4-23)。新型コロナの流行がアフリカで拡大すると、マラリア対策にも大きな影響が生じる可能性があります(WHO statement 2020-4-23)。WHOは今年のマラリアの死亡者数が77万人にのぼると予想しており、これは2018年の2倍の数になります。このように、新型コロナウイルスの流行は他の感染症の流行にも影響を及ぼす可能性があります。

(3)アジア:シンガポールのデング熱流行状況

今年はシンガポールでデング熱患者数が増加しており、4月中旬までに5400人以上に達しています(WHO西太平洋 2020-4-23)。これは昨年の倍近い数になります。5月から9月までは例年、患者数の増える期間になるため、さらなる警戒が必要です。なお、隣国のマレーシアでも今年は4万人弱の患者が発生しています。

(4)アフリカ:コンゴでエボラ熱流行が再燃

コンゴ民主共和国で4月10日から21日までに北東部のBeniで6人の患者が確認されました(WHO Outbreak news 2020-4-23)。この地域は以前から流行の中心地域でしたが、2月中旬以降、新たな患者は発生していませんでした。こうした状況を受けて、WHOは同国に発令している「公衆衛生上の緊急事態宣言」の続行を決定しました(WHO statement 2020-4-14)。2018年からの流行による累積患者数は3461人(疑い含む)で、このうち2279人が死亡しています。

(5)アフリカ:エチオピアで黄熱患者が発生

エチオピアの首都アジスアベバ南方のグラゲ地方で黄熱の患者が発生しています(WHO Outbreak news 2020-4-18)。3月上旬から1か月間に85人の患者が確認されました。エチオピアに滞在する際には黄熱ワクチンの接種を受けておくことを推奨します。

・日本国内での輸入感染症の発生状況(2020年3月9日~2020年4月12日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。出典:https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2020.html

(1)経口感染症:輸入例としては、細菌性赤痢1例、腸管出血性大腸感染症4例、腸チフス・パラチフス10例、アメーバ赤痢1例、A型肝炎1例、E型肝炎3例が報告されています。腸チフス・パラチフスは前月(2例)より増加しました。

(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱は6例で、例年よりも大幅に減っています。感染国はインドネシアが5例で多くなっています。マラリアは2例(アフリカで感染)、ジカ熱は1例(インドネシアで感染)でした。

(3)新型コロナウイルス感染症:この期間中に303例の輸入例が報告されています。第13週(3月23日~29日)は109例で最も多く、第15週は24例と減少しました。感染国は米国(44例)、スペイン(32例)、英国(31例)、フランス(22例)、エジプト(18例)、フィリピン(16例)、タイ(15例)が多くなっています。

(3)その他:風疹は1例で感染国はフィリピンでした。

 

・今月の海外医療トピックス

「新型コロナよろず相談窓口」の利用状況について

渡航者医療センターでは海外在留邦人向けに「新型コロナウイルス感染症よろず相談窓口」を開設しています。これまでに世界各地から電子メールで数十件にのぼるご相談を頂きました。相談者の中で最も多い年代は30歳代で、次に多いのが40、50歳代。男女差はなくほぼ半々です。頂いたご相談を読むと、日本よりも厳しい行動制限を強いる異国滞在の過酷さ、精神的身体的負荷の深刻さがひしひしと伝わってきます。相談内容としては、症状のある方の受診判断、持病をお持ちの方の生活上の注意点、一緒に住むご家族の心配、現地医療体制や保険制度への不安、さらには日本にいるご家族の心配等、「よろず」の名のとおり多岐にわたります。相談者がどんなお気持ちで過ごしているかを想像しながら、「不安や悩みを少しでも和らげることができれば」とお返事をしています。新型コロナウイルスの世界流行はまだまだ続き、在留邦人の方々は今後も不安な日々を過ごされることでしょう。健康面でご心配な点がありましたら、遠慮なく「よろず相談窓口」へご連絡ください。(医師 栗田直)

東京医科大学病院 渡航者医療センターで開設している「海外在留邦人向け新型コロナウイルス感染症よろず相談窓口」に関しては下記をご参照ください。

https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/news/shinryo/20200421.html