IATA、「逆BSP」急増で返金できず、2日以上の遅延可能性も

  • 2020年4月3日

 国際航空運送協会(IATA)は4月1日付で、「BSPネガティブビリングについての重要なお知らせ(Important Update related to your Agency's Negative BSP Remittance)」と題した文書をIATA代理店向けに発出した(記事下部に埋め込み)。航空券の新規予約をキャンセルが上回るなかで、期日通りに代理店へ送金しないと通告したもの。

  BSPは「IATA Billing and Settlement Plan」の略で、IATA代理店と航空会社との間における航空券の販売や精算に関するプロセスを取りまとめるシステム。精算日になると通常は、その期間に旅行会社が発券した航空券の総額から、以前発券したもののキャンセルとなった航空券代金などの返金分を相殺した額を旅行会社がIATA指定口座に入金する。

 しかし、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大で国際線の運航が大きく制限されるなか、返金分が新規予約を大きく上回って「ネガティブビリング」、つまり多くの旅行会社口座へ返金する必要が生じた。そして、精算日であった3月31日に多くのIATA代理店の口座で入金が確認できない事態となり、翌日の文書発出となった。

 文書では、影響を受けているのは送金原資を受領する前に決済する「Reported Sales Model」とし、現況下において一定期間はIATAからの送金日を最短でも精算日の1日後とすると通告。さらに遅れる可能性もあるとした。

 そして、今後の精算タームで未払いや遅延が頻発した場合には、航空会社からの入金を待ってから送金する「Funds Received Settlement Model」に変更する可能性もあるとし、そうした場合には精算日の2日後となると説明している。

 なお、BSPにおいてIATA代理店である旅行会社の精算が滞った際には即座に発券が停止されるなど厳しい措置が取られることで知られるが、今回の文書でも旅行会社からの入金期日を延期するとの記述はない。

 これに対して日本のIATA代理店からは、「代理店の支払猶予要請には一切答えず、1日・1円でも不足すれば即デフォルト扱いとするにも関わらず、事前連絡もなく決済日を遅らせるなど言語道断」、「このような差出人名や部門名さえ記載のない事後の通知書によって、決済が遅れることを強制的に追認させるなど常識を疑う」、「IATA、ひいては航空会社の優越的立場の乱用ではないのか」、「独禁法違反ではないか」などの強い批判の声が出ている。

海外では航空会社に対し訴訟検討も

 航空券のリファンドを巡っては、資金の流出を防ぐために現金ではなくバウチャーなどで代用する航空会社があるほか、返金の申請手続きを複雑化するなどして返金を先延ばしする動きもある。

 こうしたなか海外メディアでは、IATA事務総長に対して公開書簡を出す旅行会社航空会社を相手に訴訟を起こして現金による返金をめざそうとする旅行会社が出てきたり、一方ではバウチャーでの返金にお墨付きを与える国も出てきていると報じられている。