週間ランキング、1位はANA羽田線詳細、「ユニクロ」のBTMが2位

[総評] 今週の1位は、全日空(NH)による2020年度の国際線の路線と便数の計画でした。羽田から各地に就航すること自体は以前からお伝えしておりますのでさほど目新しい情報はありませんが、やはり羽田路線は旅行市場を大きく左右するものであり順当な結果と言えるでしょう。オリンピックに合わせて羽田空港の発着枠を増やそうという話は、過去の記事を見返した限りでは2014年頃に検討が始まったようですが、そんなに前だったかと驚くとともに、とうとう来たなとも思います。

 第8位に入った通り2019年は出国者数が2000万人の大台を初めて突破した記念すべき年ですが、2014年の出国者数は1690万人で、訪日外客数はまだ1341万人でした。当時は、2010年10月に羽田が再び本格的な国際空港として復活した後で、出入国者数がその程度でしたので「増やすのはいいけれども席は埋まるのか」と懸念したことを覚えています。

 そう考えるとこの6年間で起きたこと、特にインバウンドが2.5倍近くに増えたことは、信じられないほどの変化です。インバウンドの拡大があればこそ座席が埋まって新規就航や増便の意欲が高まり、座席が増えれば日本発の需要にも好影響を与えるわけで、この相乗効果なくしては2000万人の達成もなかったでしょう。

 2014年からの増加分のうち旅行会社のビジネスに繋がっているのはどれだけかという点は、今後避けて通れない問題ですが、業況が悪いよりは良いほうが望ましいに決まっており、まずはこの状況を歓迎したいと思います。

 ただひとつ、個人的に最近気になっている嫌な可能性があります。何かというと、日本はすでに相当貧しい国になってきているのではないかという話です。先週訪れた香港でも、物によっては物価や所得レベルがすでに日本と同等、あるいは逆転すらしているかもしれない印象を受け、そういった国々からすればそれは日本が十分お得で楽しい旅行先になるだろう、と感じてしまいます。

 物価というか値ごろ感は為替レートによって大きく変わりますのであくまでただの印象ではあるものの、とはいえ果たして日本という国が今後どうあるべきなのか、そのなかで旅行がどのような役割を果たせるのか、もっとちゃんと考えなければならないと思います。

 そしてさらに嫌なことを想像してしまえば、貧すれば鈍するの先には外国人旅行者のおおっぴらな排斥などもあり得る気がし、そしてそんなこと考えていたら箱根で新型肺炎にかこつけて中国人の入店を禁止する張り紙をした駄菓子店かなにかがあったというニュースをタイムリーに見聞きし、暗澹たる思いがしています。

 なお、その新型肺炎の話題も取り上げられ方が派手になってきています。金曜朝の情報番組を観ていたところ、どれほどの実績や知識を持つのか明示しない専門家氏に「個人的には患者の数は100倍はいるのではないかと思っている」などと語らせて(思うのは自由ですが)、それを根拠に「100倍か」とテロップを映していたのには憤慨しました。用心を呼びかけるのと不安を煽るのは別物です。

 かなり前に話題になった「ボウリング・フォー・コロンバイン」というドキュメンタリー映画で、恐怖を煽るのはそれによって人をコントロールするためと指摘されていたことを思い出します。香港も豪州の森林火災も新型肺炎も、旅行業界としては客観的で根拠のある正確な情報をきちんと収集し、それを旅行市場に対して冷静に提供していかなければなりません。

 なお、第2位にはファーストリテイリング、中外製薬、ヨネックスの3社がBTMにどのように取り組んでいるかをご紹介した記事が入りました。コンカーと東洋経済新報社が共催したセミナーの様子をお伝えしたもので、なかなか聞けない話であることを期待通りご評価いただけたと満足しています。

 業界誌として、旅行会社や取引先であるサプライヤーがどのように事業に取り組んでいるかは日々取り上げていますが、消費者の声をお届けすることは少なく、特に業務渡航ではこういった機会はなかなかありません。トラベルビジョンでは、以前は出張者の方にお話をお聞きする企画もあったようで、今年はこうした視点でのコンテンツ充実にも取り組んでいきたいと思います。(松本)

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