JTB高橋氏、改めてビジネスモデル転換を強調-旅行は「手段」に
JTB代表取締役社長執行役員の高橋広行氏(高ははしごだか)は1月16日、同社グループによる毎年恒例の「2020年新春経営講演会」で年頭の挨拶をおこない、改めて旅行事業からソリューション事業へとビジネスモデルの転換を進めることを強調した。「第三の創業」と位置付けた経営改革を引き続き推進し、顧客や業界、社会が抱える課題に対して「JTBならではの価値をもったソリューション」を提供することに注力する考え。ビジネスモデルの転換については「脱旅行業ではない」と述べたものの、今後は旅行以外のサービスの提供にも注力することで、グループの事業における旅行業の位置づけは「”目的”から”手段”へ」と変わることも強調した。
東京五輪のオフィシャルパートナーとして公式観戦ツアーや、上級クラスの座席や食事などを提供する「公式ホスピタリティパッケージ」などの各種商品を販売する今年については、15年の年頭挨拶で表現した「黄金の時間」の総決算の年となることを説明。その上で「JTBグループの覚悟」として、「ソリューションビジネスで新たな事業の柱を創り、大きな変化を遂げる1年」にもなると主張した。
そのための具体的な施策としては、前日の15日に発表したばかりのワールドホールディングスとの協働による「人財ソリューションサービス」(関連記事)と、本誌の新年インタビューでも「ポスト五輪の目玉」として紹介した「JTBならではのTaaS(Tourism as a Service)」(関連記事)の2つを挙げた。TaaSにおいてJTBは、訪日客がタビナカで必要とする情報やコンテンツをウェブサイト上で一元的かつ多言語で提供し、予約や決済までを可能にする「トータルコンテンツプラットフォーマー」をめざす考え。提供するコンテンツはツアー、体験、入場券、宿泊、食事、ショッピング、2次交通、シェアリングサービスなど多岐にわたり、グローバルOTAやMaaS事業者、決済事業者などとも協働するという。
TaaSにおけるサービスの提供においては「JTBならではの価値の付加」をカギとして、複数のコンテンツを組み合わせたクーポンの提供など、手法を模索する。まずは北海道版や沖縄版などエリアごとのTaaSを構築し、全国版のTaaSへと拡大するという。
高橋氏はそのほか、デジタル化の遅れが経営破綻の一因となり、昨年に倒産した英国のトーマス・クックについて言及。その上でJTBグループのデジタル化については「OTAと全く同じ土俵で勝負する考えはない。リアルエージェントである我々にとってウェブサイトはあくまでも販売チャンネルの1つ」「しかしデジタル技術が日進月歩で進化するなか、自社のウェブサイトの力を高めることは不可欠。このほどシステム開発における自前主義を改め、OTAの技術力を導入するという大きな決断を下した」などと述べ、結果的には18年にアゴダと包括的業務提携契約を結ぶに至ったことを説明した。