週間ランキング、1位はJL・HA共同事業却下-トラベルビジョンが発行7000号
[総評] 今週は、日本航空(JL)とハワイアン航空(HA)の共同事業に向けて申請していた独占禁止法適用除外(ATI)が米国運輸省(DOT)から却下の暫定的な判断を下されたニュースが1位になりました。トーマス・クックの破綻、アクセス国際ネットワークの解散と10年に1度くらいの話題が続きましたので、普通の(?)記事が1位となってホッとしています。
JLとしてはこれまで北米線、欧州線で無事に共同事業を実現してきたところで、初めての却下ということになります。HAのハワイにおける独占的立場と、全日空(NH)やデルタ航空(DL)とのイコールフッティングの難しさからの判断でしょうか。HAはまだ諦めていない様子ですが、こういったDOTの暫定判断が覆った例を私は知らず、ひとまずはこのままいくのではないかと勝手に想像しています。
そのような文脈では、ヴァージン・オーストラリア(VA)が羽田への就航意欲を表明し、実現した暁にはNHとコードシェアすると発表している豪州路線は、JLとカンタス航空(QF)がすでに提携関係にあり、そしてアジア経由の競争も熾烈であり、ハワイでの却下の理由が先述の想像通りとすると、こちらの方が共同事業が認められやすい環境といえそうです。
ちなみに、VAの羽田線はQFがなんとか枠を渡さないようにしようとしていますが、オーストラリア政府観光局はVAの支持を表明しており、またVAが就航すればQFが独占する計画よりも座席供給量が増え、さらにQFの反論もざっくり読み飛ばした限りでは同社による独占を正当化する根拠は弱いので、こちらもこのままVAが1枠を得る形で落ち着くのではないでしょうか。
もうひとつさらに関係ないことを書いておくと、共同事業についてNH側はJoint Venture(JV)、JL側はJoint Business(JB)と表現するのが特徴的で、我々のような立場としては大きな違いがあるとも感じられず、統一してくれないかと常々思っています。ただ、両社の広報担当部署の名称もNHが「広報室」であるのに対してJLは「広報部」であったりもし、諦め半分でもあります。
さて、このほか10位には100周年を迎えたKLMオランダ航空(KL)の記事も入りました。100年前から商業飛行を続けているというのは物凄い話で、おめでとうございます以外の言葉が浮かびませんが、ユニークなのは記事の内容です。
なにかというと環境への負荷軽減に対する姿勢で、欧州で最近急激に勢いを増している「フライトシェイム(飛行=恥)」への対応という側面もあると思いますが、それにしても鉄道との積極的な提携などは出色です。フライトシェイム運動のリーダーの1人であるグレタ・トゥーンベリさんが注目を集め、心ないメディアがたまたま彼女の表情が歪んで写った写真を使ってネガティブな記事を書いたりしていますが、私はKLの考え方に賛成です。
日本の航空会社や旅行会社が、このあたりの分野でKLほどに先駆的な役割を果たす日が来てほしいと願いつつも、大体なんでもアーリーマジョリティからレイトマジョリティくらいでちょっと珍しいことをするのがお家芸というような感もあり、さらに今回の記事も10位という注目の低さで残念でなりません。「楽しく、クールで、セクシー」が良いかはさておき、鶏口牛後であってほしいものです。
なお、今週10月10日の朝刊でトラベルビジョンは配信7000号を達成しました。私が2009年に編集長(当時は代理でしたが)を引き継いだ頃は2700号くらいでしたから、ずいぶん遠くまで来たものだと感慨深く思っています。
また、トラベルビジョンの数字という意味では、この2週間ほどでウェブサイト上部にあるメール登録者数が大きく減っていることにお気付きの方もおられるかと思います。これは、先月にトラベルビジョンのダイレクトメールをすべての方にお送りしはじめたのですが(それ以前はご同意いただいた約8割の皆様に送信していたもの)、それを嫌われた方が少なからずおられたようです。
トラベルビジョンはご存じの通り無料媒体であって広告収入が支えであり、それをご容赦いただけないのであれば大変残念ではありますが退会もやむなしと割り切っています。有料でいいから広告なしで、というお声があればそういう選択肢もあり得るわけですが、今のところ耳に届いたことはありません。今回登録を解除された方々は広告にご興味をお持ちでなかったわけで、その意味で登録者数は少々減ったとしても広告効果としては変わらず、むしろダイレクトメールでは1万通以上多く送ることができるようになりました。旅行業界に対する告知や認知度向上などにご興味がある場合は、是非ご連絡いただけますと幸いです。(松本)